注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。
今回の"テレビ屋"は、きょう18日に最終回を迎える日本テレビ系ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』で、脚本と演出を手がける福田雄一氏。『笑っていいとも!』や『SMAP×SMAP』などの放送作家という経歴を持つ福田氏は、バラエティ出身ならではの発想が、ドラマ制作に生かされていると語る――。
――当連載に前回登場した『しゃべくり007』演出の藤森真実さんが『勇者ヨシヒコ』シリーズが大好きで、特にテレビ各局をイジった「ダシュウ村と5人の神々」の回は、「よくあれができたな」と驚いてらっしゃいました。いつもブラックな笑いとギリギリのところをやっていますが、どうやってアイデアを出して、自分の中にどこでGOを出しているのかを聞いてみたいとおっしゃっていました。
ネットニュースとかでも『ヨシヒコ』が攻めてる、攻めてるってすごく書かれたんだけど、僕からしてみたらそんな意識はなかったんです。僕が学生の頃とかに見ていたテレビでは、わりと普通にやっていた内容なんじゃないかなって気がするんですよ。だから『ヨシヒコ』でやってたことは、"攻撃"とか"抵抗"というようなことではなく、"回帰"。ちゃんと面白いものを面白いままに発信できていた頃のテレビは、あんなこと平気でやってましたよ。
僕は、あの『ヨシヒコ』の「ダシュウ村」が「ヤベえんじゃないか」「やっていいのか」って言われている状況が、逆にいまの若い子はかわいそうだなって思ってしまうんです。やっぱり「シエクスン」(※フジテレビを擬人化したようなキャラクター)を見て、「死んでいる」って言わせるという描写をやりたかったのは、そういうことを一番喜んでやってきたのがフジテレビだから。フジテレビが絶好調の頃に他局の風刺をいっぱいやってたわけじゃないですか。
――『カノッサの屈辱』とかでもやってましたね。
そう。僕がよく覚えてるのは、(明石家)さんまさんがやってた『テレビの裏側全部見せます!!』っていう番組。各局の会議風景をコントにしてたんですよ。TBSはこんな会議してる、テレ朝はこんな会議してる、NHKは……って。日テレの会議では、みんなチンピラみたいなスーツを着てやってたり(笑)。完全に他局をバカにしてたんです。でも、それを見てみんなで笑っていた時代なんですよね。
だから僕は「シエクスンが死んでる」ってやったときに、一番思っていたのは、フジテレビがそれを見て笑ってくれてればいいなって。僕らにしてみたらテレビの王様はフジテレビだし、おもしろいテレビを引っ張ってくれていたリーディングカンパニーなんだから。やっぱり、あれを見て「この野郎」って怒っていたらフジテレビも終わりだと思うし、「やりやがったな」って笑ってくれてたら、これから楽しみだなって。フジテレビへの愛を込めたシーンだと僕は思っているんですよ。
――今回の『スーパーサラリーマン左江内氏』は、『ヨシヒコ』などと違ってゴールデンタイムの放送ですが、表現の仕方に変化はありますか?
深夜ドラマを作るときも、映画作るときも、スピリット的には「ファミリー向け」っていうのを考えているんですよ。『ヨシヒコ』はド深夜ですけど、チビっ子にも喜んでもらっているドラマだと思いますし、基本的には深夜であろうとゴールデンであろうと子供が見ても、家族で一緒に見ても楽しいものをというものを作ってるんで、あんまり姿勢としてはそんなに変わらないですね。
ゴールデンだからといって構える感じではなく、今回は別に時間帯関係なくやってもいいんじゃないのっていう感覚でやらせてもらってますね。なかなかないことだと思うんですよ。ゴールデンのドラマで演者が素で笑っちゃってるドラマって(笑)
――脚本も演出も両方同じ人がやるというのは、深夜ならともかく、ゴールデンのドラマでは珍しいことだと思いますが、大変ではないですか?
あんまり変わらないですよ。むしろ楽です。『ヨシヒコ』より全然楽です!(笑)
――どういった点でしょうか?
(即答で)スケジュール。ゴールデンはお金あるから、時間とってくれるんですよ! 休みが超あるんですよ!(笑)。『ヨシヒコ』はお金ないから、朝から晩までびっしり毎日やっての2カ月ですからね。『左江内氏』は、ちゃんとお金あるんで、時間が確保されてるから、全然余裕です! ホント、『ヨシヒコ』なんて死ぬ思いですからね。早朝から夜中まで。『左江内氏』は大抵、夕方とかに撮影が終わってますから。