ファイナルステージの前に、昨年と一昨年の2年連続で準優勝に終わったZAZYがVTRで登場。「1年たってもまだ悔しいですね。『僕はR-1優勝できない人生やったんや』っていう感じ。R-1のファイナルって1対1なんで芸人にとって一番ヒリつくステージじゃないですか。2分の1で『勝つか負けるか』って。優勝と準優勝では全然違いますからね」と実感を込めて語り、絶対に負けられないムードを醸し出した。ZAZYは最も悔しさをあらわにした準優勝者であり、「R-1を夢見ていた」という意味で納得の演出だろう。

田津原は先ほどと同じカードゲームの別バージョン、きょんはリモートで別れそうな友人の男女を説得する男の1人コントを披露。ザコシが田津原、野田が田津原、小籔がきょん、バカリがきょん。2票ずつになったこの時点で、最後の陣内が「いやいや、(俺の1票がそんなに責任重大)ちゃうちゃう!」と立ち上がって中断させて笑いを誘いつつ、田津原を選んで王者が決定した。

ところが、広瀬アリスが早口で進行し、急いでトロフィーなどを渡し、田津原が「どんな人生?」とひと言だけ話して終了する、何ともせわしないエンディング。CMを挟まずミニ番組『まもなくENGEIグランドスラム』に切り替わり、2つのスタジオをつなげてトークを始めたが、この構成には疑問が残る。

田津原が「もうちょっと泣く余韻が欲しかったです」とコメントしていたように感動や祝福ムードは薄れ、何より審査員たちのコメントが全くないのは残念だった。なぜ田津原だったのか、今回はどんな大会だったのか。5人の声を聞けないエンディングは大会の権威を削いでしまうだけに何とももったいない。

その他の場面でも審査員の採点コメントが他の賞レースと比べても明らかに少なく、編成の難しさはあるのは分かるが、生放送の賞レースで2時間はやはり厳しいのだろう。

ちなみに、きょんが披露した1本目のネタは放送中から「コットンのコンビネタを1人でやっているだけで、これはありなのか」という声がネット上に飛んでいた。あの三谷幸喜が絶賛する、きょんの演技力が素晴らしかったのは間違いないが、このあたりの規定をクリアにしなければ大会の権威も優勝者のステイタスも上がらないのではないか。

■生放送コラボとサポートへの期待感

最後にもう1つ言及しておきたいのは、『ENGEIグランドスラム』とのコラボ。『ENGEIグランドスラム』を3年半ぶりの生放送にしてまで『R-1グランプリ2023』とコラボさせたのは、まさに英断だった。

TBSが『キングオブコント』を8時間生放送の『お笑いの日』に組み込んだことで盛り上がりを取り戻したことを踏襲したのだろうが、この編成によって一大イベント感は一気に増した。ただ、土曜14時にスタートし、メインイベントとして『キングオブコント』を放送するTBSに比べると、『ENGEIグランドスラム』より先に放送する『R-1グランプリ』の扱いは軽く、改善の余地を残している。

また、『ENGEIグランドスラム』のトップバッターに因縁のウエストランドを据え、トリを新王者の田津原が務めるという構成は見事だった。さらに、バカリ、ザコシ、霜降り明星、きょんが両番組をハシゴしたほか、松岡茉優の体調不良によって友人の広瀬アリスがMCを務めるというハプニングも生放送の醍醐味。ただ、最もお笑いフリークを喜ばせたのは、ファイナリストの楽屋をずん・飯尾和樹がめぐるコラボ中継企画だろう。

田津原を除く敗者7人が一発ギャグなどを披露したほか、チョコレートプラネット、ジェラードン、堀内健がそれぞれ架空のピン芸人「おきょめ」「長田ショルダー」「りゅうちゃん」「ちぃちゃん」「クソ真面目大学生タケヒコ」を演じて本ネタ以上の笑いを誘っていた。

優勝者には賞金500万円と「全国ネット優勝特番」などの特典が明かされていたが、本当に必要なのはフジテレビによる全面的なサポートではないか。これまでは別格の『M-1グランプリ』はさておき、TBSの『キングオブコント』や日本テレビの『女芸人No.1決定戦 THE W』と比べると、バラエティへの出演数という点でサポートが十分とは思えないところがあった。

それだけに、大会当日に『ENGEIグランドスラム』と生放送コラボした今年は、フジテレビのサポートが期待できるのかもしれない。田津原は「銀河系一、平場が弱い」と自虐するだけに不安はあるが、まずは4月からの3カ月間、フジテレビの番組にどれだけ出演できるかが鍵を握りそうだ。

■次の“贔屓”は――日曜の人気番組がコラボ! 『NHKのど自慢』『行列のできる相談所』

吉田沙保里(左)と王林

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、12日に放送されるNHK総合『NHKのど自慢』(毎週日曜12:15~)と、日本テレビ系『行列のできる相談所』(同21:00~)のコラボ。

毎週日曜に放送されているNHKと日本テレビの人気番組が意外性十分のコラボを行う。まず昼の『NHKのど自慢』には北村晴男弁護士と吉田沙保里がガチンコで予選会に参加し、王林はゲストとして歌唱。次に、夜の『行列のできる相談所』には小田切千アナと鐘の秋山気清が出演するという。

それ以外でも、どんなコラボが見られるのか。意外に縁が深い両局だけに、思い切った演出が見られるかもしれない。