テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第257回は、7日に放送されたTBS系バラエティ番組『炎の体育会TV 新春3時間SP』(19:00~)をピックアップする。
3月で約11年半の歴史に幕を下ろすと複数メディアに報じられているが、新年第1弾はどんな内容だったのか。大型企画などの可能性も含め、最初の放送をチェックしておきたい。
■新春SPにふさわしい3時間生放送
番組冒頭、MCの今田耕司から今夜の放送が「超2大決戦」「豪華3時間生放送」であることが明かされる。サッカーとボクシングというセレクトも含め、年明けにふさわしい華のある放送になるのでは……と予感させた。
まずは、サッカーの恒例企画「動く的」がスタート。1人目は考案者・大久保嘉人の次男(12歳)が登場し、ワールドカップ得点王・フランス代表のエムバペと同じ記録で15枚だった。
2人目は17歳の少年GKで、記録は17枚。「日本代表の川島永嗣を超えた」ことがフィーチャーされたが、この“無差別な比較”や“後付けの勝敗付け”も『炎の体育会TV』ならではの魅力と言っていいだろう。
3人目は中村俊輔が登場し、スタートしたと思ったら、3枚のところで画面が切り替わり、過去に放送されたエムバペ、ネイマール、イニエスタ、遠藤保仁の挑戦がダイジェストで流れ始める。さらに、「まだパーフェクトがいない」ことが強調されたが、「これは達成へのフラグかもしれない」と感じた視聴者は多かったのではないか。
カメラが切り替わると、現れたのは中村俊輔ではなく、田中マルクス闘莉王。ワールドカップ中にYouTubeの超辛口コメントが話題になったばかりであり、ここでもエムバペの記録をイジって笑わせる。加えて17枚に終わり、「やっぱ自分がヘボだった」とオチをつけるなど、タイムリーかつバラエティ向けの最適なキャスティングだった。
4人目は稲本潤一が登場。妻の田中美保から夫の素顔を明かすほのぼのとしたコメントが挟まれたあと、記録は17枚。続いてカタールワールドカップ日本代表の相馬勇紀が登場すると、その応援に三郷FCジュニアのサッカー少年たちが現れた。
記録は18枚だったが、「相馬選手20枚頑張れ!」「いけるいける」の大歓声が番組を盛り上げたのは間違いない。細かいところだが、当番組はこのような構成・演出の小さな努力が多く、「トップアスリートにふさわしいムードを」というリスペクトを感じさせられる。
■サッカー企画も生放送で見たかった
最後の5人目にあらためて中村俊輔が登場。俊輔は1年前に内田篤人が考案した「動く的」でパーフェクトを達成していたが、なんと今回も20枚すべてを撃ち抜いてしまった。エムバペやネイマールなどの世界的名手も達成できなかっただけに、年明け早々からなんともめでたい。
ただ、サッカー企画はワールドカップ終了から約1カ月と余韻がまだ残るタイミングだけに、すべて収録で生放送にした意味がなく、もったいない印象が残った。現役Jリーガーがシーズンオフであり、引退した選手も多いだけに、セッティングの問題などがあるにしても、こちらも生放送にできたのではないか。新春3時間特番だけに、ボクシングと2つ生放送にできるほどのバイタリティや予算がないのであれば、ちょっと寂しさを感じてしまう。
放送時間の約半分が過ぎたところで、武尊VS体育会格闘技軍の生ボクシング対決がスタート。まず、体育会格闘技軍のメンバーがオードリー・春日俊彰(43歳)、Mr.シャチホコ(29歳)、俳優・横田龍儀(28歳)であることが明かされた。
今回のルールは、「2分2ラウンド×3人」「武尊は1ラウンド左手+右手10発のみ」「タレント側はヘッドギアをつけ、武尊はキックを封印」。右手のパンチはほぼ封印され、しかも体重差があり、3試合連続などの大きなハンディ戦だが、このあたりのマッチメイクは長年の経験値があるだけに何の不安もない。
1人目のMr.シャチホコは、日体大ボクシング部OBである上に、武尊とは7階級・20kgもの体重差があるかなりのハンディ戦。しかし武尊は2R残り30秒でTKO勝ちを収め、右パンチは2R4発しか放たなかった。これが生放送のリアルだろう。
2人目の春日は早速、「体育会TVに来たことを後悔させたい」と挑発。生放送で格闘家を怒らせてでも盛り上げようとする姿勢は芸人の鑑であり、鍛えられた肉体も含めさすがの安定感が漂っていた。約27kgの体重差がある中、武尊はジャブでダウンを奪ったほか、残り十数秒でTKO勝ち。今田から「いい試合でした」という声が飛んでいたが、右のパンチは2Rでゼロであり、春日は「あ~来なきゃよかった!」とオチをつけた。