放送時間残り30分あまりとなったところで最終決戦がスタート。ウエストランド、ロングコートダディ、さや香の順でネタを披露したが、毒舌、コント系、正統派しゃべくりと、見事なまでに色分けされただけに審査の難しさが伝わってきた。

CMをはさんで錦鯉、那須川天心、松本、礼二、志らく、富澤、塙、大吉、邦子の順でコメントを聞き、審査員がファイナルジャッジのボタンを押したところで、「今年もCMのあとです!」のお約束発動。しかし、「またか……」と落胆することなかれ。次の映像に驚かされた。

まず流れてきたのは、3組の初出場と今回をオーバーラップさせた映像。続いて、出場各組がせり上がりから登場するシーンをまとめた映像が流れ、『M-1グランプリ』に懸ける芸人たちの思いがひしひしと伝わってきた。続く空気階段による高須クリニック風の「日清どん兵衛」CMも含め、見事な仕事であり、「ディテールまですべて楽しませてナンボ」という意地を感じさせられる。

結局、大吉が入れたさや香以外は全員がウエストランドを挙げ、ファーストラウンド3位からの逆転で第18代王者に輝いた。

ウエストランド2人がひと言ずつ喜びを語ったあと、松本が「こんな窮屈な時代なんですけど、キャラクターとテクニックさえあればこんな毒舌漫才もまだまだ受け入れられるという夢を感じましたよね。素晴らしかったです」と称賛のコメント。ところが、その後は礼二、邦子、志らく、富澤が急いでひと言コメントしたのにとどまり、塙と大吉にその機会は与えられなかった。

ネット上の声を見る限り、エンディングで視聴者が最も求めているのは審査員たちの声。それだけに事情はあるのかもしれないが、結果発表前の取って付けたようなコメントをカットしてでもこちらを手厚くしたほうが支持は集まるのではないか。

ウエストランド・井口浩之の「自分の人生なんですけど、初めて主役になれた気がしました」というラストコメントが感動を誘いつつ、CMをはさまず次番組の『くりぃむナンタラ』がスタート。「次の審査員は俺だ-1GP2022」が始まり、お笑いフリークがそのまま楽しめるの巧みな編成が今年も見られた。

ちなみに、昨年の「次の審査員は俺だ-1GP2021」トップバッターは今年M-1王者になったウエストランド。『M-1グランプリ』を準々決勝までで敗退していなければ、この番組には出づらいのだが、その意味で今年トップバッターだったインディアンスは来年の王者になれるのか。ちょっと見物かもしれない。

■今年も「最強番組」であることを立証

今回はTwitterのトレンドランキングを横目に番組を見ていたのだが、その9割型は『M-1グランプリ2022』関連ワードで占められていた。やはり生放送のガチンコバトルは“最強のリアルタイム視聴コンテンツ”であり、今年も「『M-1グランプリ』が現在のナンバーワン番組」であることを立証。もともと漫才は見続けてもらう上でのハードルが高く、専門番組がほとんどないことを踏まえると、ブランディングと演出の勝利と言っていいだろう。

「さや香優勝」がトレンド上位にランクインするなど、彼らが視聴者の評価が最も高かった感があり、今年も審査の是非を問う声は少なくなかった。そんな「審査員が審査されている」という厳しさが他の賞レース以上に高いからこそ、無用な批判を避ける上で「基本的にコメントは全員に聞く」というスタンスが採られていたのではないか。

唯一、最下位・ダイヤモンドへのコメントが7人中5人にとどまったのは、敗者にムチ打ついじめのような図式を避けるためか。それとも、苦言を呈さざるを得ない審査員をフォローするためか。どちらにしても制作サイドの配慮が感じられた。

生放送番組だけに気になる視聴率は、関東が個人12.1%・世帯17.9%、関西が個人21.6%・世帯30.1%(ビデオリサーチ調べ)。ちなみに昨年は、関東が個人12.6%・世帯18.5%、関西が個人20.1%・世帯28.8%だから、「盛り上がりをキープできている」と言ってよさそうだ。

ちなみに、最大のライバルだった『鎌倉殿の13人』最終回は、個人8.9%・世帯14.8%。こちらの脚本・演出も素晴らしく、『M-1グランプリ2022』を相手に健闘したように見える。ただ、同作は序盤からトレンドランキング世界1位とり続けてきたが、さすがに今回はパワーワードを次々に繰り出す『M-1グランプリ2022』に及ばず、こちらのすごさが際立つ形となった。

テレビ業界に求められているのは、お笑い以外の“ガチンコ賞レース”をどれだけ作り、盛り上がりを生み出せるのか。料理、歌、ダンスなどで、そんな試みが見られるが、『M-1グランプリ』に続くブランドにするためにはまだまだ試行錯誤が必要だろう。

■次の“贔屓”は……初のクリスマス大会で魅力が倍増?『ハモネプ クリスマスSP』

『ハモネプ クリスマスSP』MCの(左から)原田泰造、井上清華アナ、名倉潤、堀内健 (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、24日に放送されるフジテレビ系特番『ハモネプ2022クリスマスSP』(21:15~)。

『青春アカペラ甲子園・全国ハモネプリーグ』は、主に2007年から続くおなじみのコンテンツだが、12月の放送は初めて。しかも24日に「クリスマスSP」という新たな試みが行われる。今回は183組から勝ち上がった12組の学生チームが「今年の話題曲&冬の名曲で日本一をかけて対決する」という。

12月やクリスマスとアカペラは相性がよさそうなだけに、定番化などの可能性をチェックしてきたい。