ほどなく、コスタリカ戦のスタメンが発表された。これぞ生放送の醍醐味だが、こんなときに出しゃばらないのがタモリ。冠番組のおいしい場面であっても、専門家たちにコメントを任せてほとんどリアクションすら取らなかった。

その後、「カタール ワールドカップ熱盛 世界中が熱く盛り上がったシーン」をはさんで試合まで1時間を切ったころ、ドイツ戦の映像を再度放送。視聴者によっては「またこれ?」と食傷気味の映像だが、タモリは「何度見ても気持ちがいいですね」とあくまで前向きで、番組のテンションを決して下げない。

コスタリカ戦の話題になり、スタジアムと中継をつないで松木安太郎、川淵、中山雅史らのコメントが飛び交うと、さらにタモリはコメントをはさまず見守りモードに突入。試合が近づいてきたことを意識して、戦いのムードを邪魔しないようにしているのか。

ここで、タモリとともに「お笑いBIG3」と言われる明石家さんまの顔が思い浮かんでしまった。さんまならガンガンしゃべり、ボケも交えて盛り上げようとしたのではないか。ただサッカーワールドカップのようなビッグイベントだからこそ、現在の視聴者には笑わせようとするさんまより、流れに身を任せるタモリのほうが受け入れやすいのかもしれない。

最後のCM明けに、タモリは「試合まであと20分ほどになりましたけども、川淵さんいよいよですね」とコメントを振り、中山が「僕もウォーミングアップしようかな」と体操し始めて笑わせるのを見届けて、「どうも川淵さん、中山さん、ありがとうございました」の一言で淡々と番組を締めくくった。

結局、一度も「頑張れニッポン代表!」と力まず、ガッツポーズもしなかったタモリ。しかし、そのテンションはいつもよりわずかに上がっていて、それを感じ取っていた視聴者が多かったのではないか。

実際、タモリは生放送であるにもかかわらずコーナー振りの大半を担い、「うんうん」「そうだよね」「なるほど」のあいづちがいつも以上に多く、コスタリカの生中継やサウジアラビアの絶叫アナウンサーにも反応していた。そんなタモリなりの小さなハイテンションを感じ取り、視聴者はコスタリカ戦への思いを高めたのだろう。

その意味で、タモリは国民を動かすモチベーターとしても日本代表クラスの存在感があり、この番組がそんな強みを持ち合わせていることが分かった。

■次の“贔屓”は……「芸能人が芸能人を撮る」ドキュメント『芸能人監督グランプリ』

東野幸治(左)と草なぎ剛 (C)NTV

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、12月2日に放送される日テレ系バラエティ特番『芸能人監督グランプリ』(19:00~)。

コンセプトは、「芸能人が監督となって本気で気になる芸能人に密着したらどんなドキュメンタリーができあがるのか」。スタッフではなく同じ芸能人だからこそ引き出せる素顔や、めったに語られない本音とは…。

その組み合わせは、フワ監督が撮る上沼恵美子、滝沢カレン監督が撮る黒柳徹子、東野幸治監督が撮る草なぎ剛、羽鳥慎一監督が撮る斎藤佑樹と興味深いものばかり。「多忙な人気者が人気者にカメラを回し続けるほか、編集やナレーションを担う」というハードルの高い企画だけに期待していいだろう。