2人目の“高校生ヴォーカル”は2年12組の慶二くん。「内気で人見知り、緊張しいで、みんなの輪に入れない、素を出せない」「『嫌われたらどうしよう』と思い、半年以上過ぎた今もクラスになじめない」と本気で悩んでいた。

慶二くんは本番直前でパニックになりながらも、きつねが手がけたOfficial髭男dism「Pretender」の替え歌を熱唱。するとクラスメイトたちは「話したい」「カラオケ行こう」などと迎え入れる。慶二くんは「ありがとうございます」と頭を下げ、「ここからは自分の力で仲良くなっていきたいと思います」とコメントで締めくくった。

このコーナーの魅力は、勇気を振り絞った高校生たちの挑戦が「どんな結果を迎えるのか」というハラハラドキドキを楽しめることと、生徒たちの終始ノリノリで楽しそうな姿を見て元気をもらえること。

さらに、「四千頭身ときつねが生徒たちの前に出るシーンを放送しない」という編集も適切だった。あくまで主役は高校生たちであり、舞台は彼らの通う高校。芸能人が脇に徹する形の演出に留め、その意味でも大物過ぎない芸人のチョイスが絶妙だった。

続いて今回のメイン企画へ。「数々の合唱大会は中止。歌うにはマスクをしなければならなくなるほど、不完全燃焼な思いをしてきた合唱部。そんな全国の歌が大好きな高校生たちにある大物が手を差し伸べた」というナレーションが流れ、つんく♂が登場。出場5校による「ソロパートあり」「ダンスパフォーマンスあり」の新たな合唱コンクールを行うという。

1校目の神奈川県・相模原弥栄は、レベッカ「フレンズ」(85年)を合唱。ソプラノ、メゾソプラノ、アルト、テノール・バスの4パートに変換し、ソロは誰が歌うのか、ダンスの振り付けはどうするのか、踊りながら歌えるのかなどの課題を乗り越えて、378点を獲得した。

2校目の愛知県・愛知は、渡辺美里「My Revolution」(86年) を合唱。ソロパートに6人が立候補したオーディションを経て挑んだ結果、379点を獲得。

3校目の群馬県・樹徳は、Superfly「愛をこめて花束を」(08年) を合唱。「防音室に1人こもるコミュ障・陰キャの歌うまエースがフルコーラスでソロを歌う」という大胆な戦略で377点を獲得。

4校目の東京都・聖徳学園は、ZONE「Secret base~君がくれたものから」(01年) を合唱。中学生を含む最小12人で挑み、ここまでの最高点となる388点を獲得。

最後の埼玉県・川越女子は、DREAMS COME TRUE「決戦は金曜日」(92年) を合唱。トップクラスの進学校で音楽部も強豪であり、最多50人の部員から20人の精鋭をそろえて高難度の激しいダンスを披露し、384点を獲得。最小12人で挑んだ聖徳学園が優勝を果たした。

■学生生活のあらゆるシーンが対象に

『ハモネプ』(フジテレビ系)という番組もあるが、あらためて合唱というコンテンツとテレビの相性は抜群だと思わされた。さまざまな声が重なり合う合唱自体の素晴らしさはもちろんのこと、歌い終えたあとの緊張や重圧から解放された表情、全員で手をつなぎながら審査結果を待つ姿、結果が出て思わず抱き合い、大粒の涙がこぼれて止まらないなど、感動的なシーンが続出。

「今までの練習の中で一番キレイにできました」「今日のために頑張ってきてよかったです」「みんながみんな殻を破れた」「本当にびっくりするくらいめっちゃ輝いてた」「めっちゃ悔しいけど、めっちゃ楽しかった」などの心を洗われるような言葉が次々に飛び出した。

ソロパートやダンスのオリジナリティによるエンタメ性アップ、昭和・平成の曲を使えば両親や祖父母世代も引きつけられるなどのメリットも含め、当番組が続くのなら毎年放送される定番企画となっていくだろう。

今回の特番はいつの間にか、「歌を歌って完全燃焼! 昭和・平成の名曲で自分の殻をぶち破れスペシャル!」というサブタイトルがつけられ、歌に特化した内容だった。ただ、音楽系なら吹奏楽やダンスがあり、その他の運動部も文化部もフィーチャーできるだろう。

逆に言えば、恋や友情、休み時間や放課後の過ごし方なども含めて、幅広く切り取っていかなければ『学校へ行こう!』の後継番組にはなり得ない。V6の解散から1年が過ぎた今、特番放送のタイミングとしては上々だっただけに、次の展開に期待が持てそうだ。

TBSが本当に「コロナ禍の高校生を応援したい」と思っているのなら、最低でも季節に1回以上、できれば毎月・毎週のレギュラー放送をしてもいいのではないか。

■次の“贔屓”は……一夜限りのスペシャルユニットコントを披露!『ドラフトコント』

『ドラフトコント2022』MCの満島真之介(左)と今田耕司 (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、19日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『ドラフトコント2022』(21:00~)。

千原兄弟・千原ジュニア、小籔千豊、オードリー・春日俊彰、アンガールズ・田中卓志、チョコレートプラネット・長田庄平の5人が「一緒にコントをやりたい」と思う芸人を20人の中から指名。コントをイチから作り上げ、1カ月後に披露してチャンピオンを決める。

昨年11月27日に放送され、今回が約1年ぶり2度目の放送となるが、前回はとにかくレベルの高さに驚かされただけに、今年も期待していいだろう。