テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第247回は、23日に放送されたテレビ東京系バラエティ特番『住んで良かった!街ランキングBEST100』(18:30~)をピックアップする。
「関東エリアの本当に住んでよかった街をランキングで発表していく」というコンセプトの特番だが、ポイントは「住んでみたい人」ではなく「実際に住んだことがある人」に聞いたランキングであること。
6つの項目から、印象や憧れなどではないリアルな声を拾っていくという。このところテレビ朝日系の『○○総選挙』を筆頭にランキングをベースにした特番は多いが、納得感やリアリティという点で一歩先を行けたのだろうか。
■長嶋一茂と成田悠輔の異色MCコンビ
オープニングで長嶋一茂が「異色のコラボですね。“バカ”と“天才”っていう」と口火を切り、アメリカからリモート出演のイェール大助教授・成田悠輔氏が登場。実際、一茂と成田氏のMCコンビは斬新かつ新鮮であり、興味をそそられた。来年あたり、「数字が獲れるコンビ」と言われるようになっていても驚きはない。
まずは、アンケートの概要を紹介。「調査対象 対象者:1都3県(一部茨城県含む)在住の2万6,180人」が、1)交通便、2)環境、3)おしゃれさ、4)商業施設の充実度、5)飲食店の充実度、6)生活コスパ(家賃・物価)の良さという6項目を計10点満点で評価(1・2・4・5×1、3×0.5、6×2でウエイト付けし、集計した平均)するという。
さらに、LINEリサーチプラットフォームを利用したテレビ東京独自の調査であることも表示されていた。ただ、アンケートの参加者が「どこに住んでいたのか」「今どこに住んでいるのか」の割合によって結果が大きく変わりそうなだけに、納得感やリアリティという点で不安が残る。
ランキングは、50位からカウントダウン形式でスタート。50位は浦和で、東京へのアクセスの良さを紹介したあと、住人へのインタビューが始まった。LINEを使ったアンケートである以上、これらのインタビューは結果を受けてから行われたものだろう。
インタビューでは子どもがうなぎのおいしさをコメントし、番組は珍しいうな重自販機をピックアップ。さらに、すべて公立校で東大に行くという“ゴールデンコース”の存在を明かし、わざわざ学区内に引っ越した人などの声を紹介した。「住んで良かった」という内容が具体的かつ意外性があり、納得させられた人は多かったのではないか。
49位の川崎と48位の門前仲町はランキング発表のみで、その理由などはスルー。続いて47位の恵比寿は、まず埼玉県民に恵比寿の印象をインタビューして「おしゃれ」という印象が語られた。次に物価の高さがピックアップされ、「複数のスーパーを調査したところトマトが埼玉県の約2倍高かった」という実態をピックアップ。さらに、恵比寿ならではのオシャレ吉野家や高級レストランの『ジョエル・ロブション』などが紹介された。
ここで、スタジオの成田氏が「ぶっちゃけアメリカと比べると六本木とかでも安く感じます。ニューヨークは2~3倍する。幸福度低いですね」と語ると、一茂も「恵比寿は物価が高いとかあるけど、それでも安いんだよね」と同調。MCたちがVTRをフォローする形でバランスが取られた。
■街のイメージや情報はやや古いか
46位の三鷹、45位の大船、44位の後楽園・春日はスルー。43位の海浜幕張は、通勤ラッシュ、アウトレット、大型ショッピングモール、区画整理によって静かで住みやすい、東京湾まで徒歩約10分などが紹介された。
42位の上大岡はスルー。41位の錦糸町は、東京スカイツリーが見える街、繁華街、サウナがピックアップされ、成田氏が「街中にサウナとか温泉があるのって、ニューヨークでもほぼない」と魅力を補足した。
40位の本八幡は、「千葉県だけど気持ちは都民」、サイゼリヤ1号店、毎朝大量の自転車であふれる北京通り、座って通勤するために始発の本八幡に向かうなど。39位の二子玉川はスルー。38位の新浦安は、今年8月にオープンした冷凍食品専門店、ディズニーリゾートに自転車で行けて花火も見えるなどを紹介した。
37位の府中、36位の南大沢、35位の調布はスルー。34位の神楽坂は、オシャレで品がある、ワインバーが80軒以上、花街ならではの小路と路地裏の名店などがピックアップされた。
33位の荻窪、32位の戸越銀座・戸越はスルー。31位の北千住は、5路線が乗り入れるターミナル駅、下町で物価が安い、駅周辺に10以上の商店街、近年大学が5つできてスイーツ店が増えているなど。
29位の東陽町は、有名店を含む10店がひしめくパン激戦区。同率29位の辻堂は、「海が近いだけ」からショッピングモールが次々にできて便利な街になったこと、サーフィンマンションや移住家族の家を立て続けに訪れた映像が流された。
27位のたまプラーザは、「セレブが住む上品な街」のみ。同率27位の高円寺は、商店街、人情、味のある居酒屋さん、安い店が多い、今回の調査でコスパ部門1位、1着1,000円以下の激安古着店が多いなどがピックアップされた。
ちなみに、筆者は高円寺に住んでいるが、紹介した店はさまざまな番組に出続けてきた店ばかり。数年前から「コスパがいい」というだけの街から抜け出して、洗練された店が増えている。つまり、この番組がピックアップする「街のイメージや情報としては、ステレオタイプで、やや古いのかもしれない」と感じさせられた。