テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第245回は、8日に放送されたTBS系バラエティ特番『お笑いの日2022』(14:00~)をピックアップする。

すっかり秋の風物詩となった『お笑いの日』だが、今年は過去最多の100人超が出演して8時間の生放送。その内容は、『お笑いプラスワンFES』『あらびき団』『ザ・ベストワン』『キングオブコント2022』という4コンテンツのリレーだった。

  • 『お笑いの日2022』総合MCのダウンタウン

    『お笑いの日2022』総合MCのダウンタウン

■限定スペシャルユニットが続々登場

番組は、「今年もあの長い長い1日が幕を開ける。(『ダウンタウンと100人のお笑い芸人』の文字が表示され)暗いニュースばかりが続くこの世界で闇を照らすことができる唯一の魔法、お笑い。そんな笑いの魅力に取り憑かれた100名を超える芸人たちがTBSに大集結。『お笑いの日2022』」というナレーションからスタート。

思えば『お笑いの日』はコロナ初年度の2020年に、「その重苦しさを吹き飛ばしてほしい」という思いを込めてスタートしたという経緯がある。コロナ禍が長期化する中、局の都合というより視聴者ファーストの好印象があることも『お笑いの日』の強みだろう。

オープニングアクトとして、ダウンタウンの2人が登場。センターマイクの前で漫才にも見える“立ち話”を披露したあと、浜田雅功が「それじゃあそろそろはじめましょう!『お笑いの日2022』、いよいよスタート!」と開幕宣言した。TBS開局70周年記念舞台『ハリーポッター』絡みの演出こそ微妙だったが、偽物のダウンタウンが登場する凝った演出も含め、オープニングを見てワクワクした人が多かったのではないか。

最初のお笑いコンテンツは、人気芸人が「一緒にネタをやってみたい芸人」を1人指名して1日限りの新ネタを披露する『お笑いプラスワンFES』。

見取り図+おいでやす小田、ニューヨーク+ジェラードン・かみちぃ、アンガールズ+さまぁ~ず・三村マサカズ、鬼越トマホーク+ほんこん、ランジャタイ+ダイアン・津田篤宏、マヂカルラブリー+ピース・又吉直樹、錦鯉+キャイ~ン・ウド鈴木、さらば青春の光+TKO・木下隆行の8組がネタ披露した。

ネット的に瞬間最大風速的な盛り上がりがあったのは、因縁のある鬼越トマホーク+ほんこん、「ゴイゴイスー」乱発のランジャタイ+ダイアン・津田篤宏、「ペットボトルを投げ」を使ったさらば青春の光+TKO・木下隆行の3組か。制作陣と芸人たちの「何でも笑いに変えてやろう」という貪欲な姿勢と、何が起きるかわからない生放送の魅力があふれた1発目にふさわしいコーナーだった。

次に映されたのは、『あらびき団』のスタジオにダウンタウンが移動するシーン。ここに江頭2:50が乱入したが、今や“ネット側の人”と、いまだ“テレビ界のトップ”のダウンタウンの組み合わせは、3人とも50代後半ながらかなり新鮮だった。

■ムチャぶり即興漫才のライブ感

2つ目のコンテンツ『あらびき団』は、「地上波初の生放送」で、カゲヤマ、禅、小林ゆう、ハリウッドザコシショウ、NARI、ポメラン、風船太郎、庄司智春、ビッグ小原健太が出演。途中からダウンタウンがスタジオに参加して、あらびき芸を見守る風景は、これも鮮度抜群だった。

ただ、ネタは収録済みであり、事前チェックが可能なのだろう。深夜時代と変わらないハジけた芸ばかりだったが、実はこの日、最も安全なコンテンツだったのかもしれない。

3つ目のコンテンツ『ザ・ベストワン』は、ほぼ通常営業。

霜降り明星「今年好きなベストワンネタ」、空気階段「キングオブコント王者の最もファンシーなベストワンネタ」、ニューヨーク「テレビ初披露! ゾクゾクするベストワンネタ」、ジャルジャル「テレビ初披露! 絶妙な間のベストワンネタ」、ロッチ「今のご時世を過剰に気にしすぎたベストワンネタ」、見取り図「大阪からの上京を後押ししたベストワンネタ」、ハナコ「テレビ初披露! 渾身のゴリラベストワンネタ」、NON STYLE「M-1王者 テレビ初披露! 石田の気分が良くなるベストワンネタ」が立て続けに披露された。

ここでダウンタウンがスタジオに現れ、3つのお題を即興漫才にするコーナー「ザ・ベストワンテイク」がスタート。錦鯉が「Wボケになる」「浜田雅功を意識したツッコミ」「長谷川が全力でツッコミ返す」、マヂカルラブリーが「ボケながらカミングアウト」「ボケながらカミングアウト2」「錦鯉・長谷川が漫才に加入」をそれぞれ披露した。

制作陣の「実力者にプレッシャーをかけて力を引き出す」という姿勢に、M-1王者たちがしっかり応えたことで、この日最もライブ感あふれるネタとなったのではないか。

その直後、江頭2:50が乱入してMCの笑福亭鶴瓶と今田耕司に噛みつき、さらにスタジオの女性客に体当たりするなど大暴れ。通常のネタは相変わらず「何のベストワンなのか」がファジーで強引な感があっただけに、錦鯉、マヂカルラブリー、江頭2:50に救われた形になっていた。

その後、コサキン(小堺一機&関根勤)「40年ぶりに披露! アドリブ満載 ベストワンネタ」、おぎやはぎ「今日作り上げたベストワンネタ」、シソンヌ「Mr.ビーンのようなベストワンネタ」、爆笑問題「世相を斬りまくる最新時事ベストワンネタ」を披露して終了した。