続くテーマは、世界三大料理人。まず番組は、大皿からコース料理に変えたフランスのオーギュスト・エスコフィエ、甘味・酸味・苦味・辛味・塩味の五味調和を伝えた中国の伊尹(いいん)、ドネルケバブを作ったトルコのイスケンデル・エフェンディを三大料理人に挙げた。

続いて諜報部員の和牛・水田信二が登場し、ここでは対決ではなく、四大入り「するか」「しないか」のジャッジとなるという。その人物は唯一、現代の人物であり、しかも料理人ではなく物理学者のエルヴェ・ティスだった。

ティスは食材に調理過程で起きる変化を分子レベルで研究し、よりおいしい料理を目指す“分子ガストロノミー”の研究を進め、料理人のピエール・ガニェールはそれを生かしたフォアグラのシャンティ(ホイップ)を考案。この料理はスタジオで試食されたが、評議員たちは絶賛の嵐だった。

さらに、3つ星シェフのフェラン・アドリアが分子料理を追求し、ゴルゴンゾーラの球体、ココナッツスポンジ、バラのアーティチョークなどの料理を作り、世界的なグルメ誌のランキングで「4年連続世界1位のレストラン」の座を獲得。現在、分子ガストロノミーは世界30か国以上の大学で研究されているという。

そのプレゼンを聞いたスタジオの大久保は「年々、歯が弱くなっている。何でもホイップにできるのなら、高齢化社会での可能性を感じる」と笑いを交えながら、NHKらしい社会問題を絡めたコメントを披露。これで可能性を感じさせると、けっきょく川島、佐藤、大久保が賛成、いとう、高橋が反対でギリギリ四大入りが決まった。

視聴者にしてみれば「なぜ料理人ではなく物理学者を入れるのか?」とツッコみたくなるだろうが、そこは単なる知的教養番組ではなく、遊び心のあるバラエティなのだろう。ただ、NHKの番組だけに「ガチンコでは?」と思い込む視聴者もいるのではないか。

番組は川島の「若干プレゼンに鼻につくところがあって、ティス+水田は苦味」というオチのコメントをはさんで、内村の「UMRは今後も世界四大化を進めていきたいと思います。それではまた次の評議会で会いましょう」という言葉で終了した。

その言葉通り、今後もそれなりの頻度で放送され、レギュラー化も期待されるところだが、やはり鍵を握るのはネタ選びか。「四大」と言い切れるスケール感と、映像のインパクトが興味に直結するタイプの番組だけに、制作サイドの心理的なハードルは高そうだ。

ならば、もう少しバラエティ色を濃くして、やわらかいテーマを増やすなどのマイナーチェンジがあっていいかもしれない。番組冒頭のコメントも「知的教養番組」ではなく「知的教養バラエティ」と言うほうが、お飾り状態になりがちなMC・内村のテンションも上がりやすいのではないか。

ともあれ、資料と資金に恵まれたNHKだからこそ伸びしろの期待できそうな番組であることは間違いない。

■次の“贔屓”は……コロナ禍3度目の放送で変化はあるか? 『24時間テレビ45』

『24時間テレビ45』チャリティーマラソンランナーの兼近大樹(EXIT)

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、日本テレビ系大型特番『24時間テレビ45』(27日18:30~)。

45回目を数える今年のテーマは「会いたい!」。メインパーソナリティーをジャニーズのYouTubeユニット・ジャにのちゃんねる(二宮和也、中丸雄一、山田涼介、菊池風磨)、4年ぶりの単独ランとなるチャリティーマラソンランナーをEXIT・兼近大樹が務める。

コロナ禍に突入してから3年目になるが、何が変わり、何が戻り、何が生まれているのか。ポイントとなるいくつかの企画をピックアップして掘り下げていきたい。