ここで番組テーマの“昭和”からいったん離れて「松本がルーツの言葉」というコーナーがスタート。進行役に川島を据えて、「空気を読む」を筆頭に「スベる、ダメ出し、へこむ、逆に、SとM、引き出し、ドヤ顔、イラッとする、かぶる、からみにくい、ドン引き、食い気味、週8、噛む、グダグダ」などの言葉が挙げられた。
いずれも現在Z世代がふだん何気なく使っている言葉だが、すでに知られているものも多くインパクトが薄い上に、昭和というより平成で広がったものが多く、今回の特番には違和感がある。だからこそ松本人志役にJP、浜田雅功役に山本高広、三村マサカズ役に原口あきまさを起用して再現映像を作り込むことで、笑いを補強したのか。
どう見ても“松本アゲ”のコーナーだけに、最後は本人が「ちょっともうこのコーナーやめない?」とこぼしていたが、日テレにしてみれば、『ダウンタウンvsZ世代』と同じく高橋利之氏が企画・演出を手がける年末の定期特番『誰も知らない明石家さんま』でもたびたび見せる得意な企画の1つ。はたして第2弾が放送されたら、松本は快く“松本アゲ”のコーナーを再び快諾するのか。
“昭和”に戻り、6つ目のトピックスは「昭和のバズった人」で、ファミコンの高橋名人、塩沢とき、ユリ・ゲラー、オリバー君、鈴木その子、きんさん・ぎんさん、宜保愛子、ハマコーを紹介。
7つ目のトピックスは「昭和の恋愛・結婚」で、新幹線のディスコ列車、スキー場デート、クリスマスプレゼント、ティファニーのオープンハート、嫁入り道具、宮崎への新婚旅行、新幹線のホームへ新婚旅行の集団見送り、巨大ウエディングケーキがピックアップされた。
最後はスタジオで嫁入り道具に関するトークがスタート。Z世代の池田が「(桐だんすを持っていくとか)そういう決まりはイヤじゃないですか。今、洋室が多いからインテリアとして微妙ですし」と切り出すと、昭和世代の島崎が「一生持つものをね……ま、独身が言うのも変ですけど」、松本が「ホンマや! だまされるとこだった」と笑いにつなげて番組は終了した。
■制作技術は高いが独創性は低かった
放送前は「昭和で3時間は長いか」とも思っていたが、始まってみたらアッという間。特に40代後半以上の人々は懐かしさや意外な発見から会話が弾み、飽きずに見られたのではないか。7つのトピックスにわたる構成はバランスが良かった上に、それぞれの密度も濃く、必ず笑いが盛り込まれていた。
なかでも感心させられたのは、昭和30~40年代の映像もふんだんに盛り込まれていたこと。これまで昭和の映像と言えば、昭和50~60年代のものが多かっただけに、今回は現在との対比が大きく、おのずと笑いにつながっていた。さらに、竹刀を使った体罰シーンを映した“スパルタ教育”では、「昭和はある意味、魂と魂がぶつかり合う時代だ」とシュールにまとめるなど、コンプライアンスや苦情対策で逃げずに放送したことも素晴らしい。
日テレは今年5月、こちらも高橋利之氏が企画・演出を担当するTVer限定コンテンツ『神回だけ見せます!』を手がけるなど、アーカイブの発掘や有効利用に熱心であり、そこにテレビ局の強みがあることを他局より自覚しているのではないか。権利関係や商習慣などのハードルはあれど、今後もそれらを乗り越えて、年代を超えたコンテンツのすごみを見せてほしい。
もしテレビ番組が10点満点の採点競技であれば、当特番の技術点は9.90点くらいつけられるのではないか。一方で「独創性や発展性」という意味での芸術点は極めて点数がつけづらい。
これまで何度も見てきたような切り口やネタが目立ったことを筆頭に、最初から最後まで、「なぜ真夏の今、昭和の大特集をするのか?」「なぜそれをダウンタウンの冠特番にしたのか?」などは伝わってこなかった。また、Z世代を対決構図に入れる構成だったが、その世代の視聴者を引きつけられたかと言えば、やはり疑問符がつく。
幼少時の写真をたびたび写したり、若手時代の映像でイジったり、スタジオで手をつないでフォークダンスをさせたりなどの演出が見られたのは、「ダウンタウンの冠特番であることの必然性をつけるため」なのか。
本人たちも「ダブルデートした」ことを明かすなどのリップサービスを見せたが、それでも既存番組との差は特に感じず、ましてや『ダウンタウンvsZ世代』というムードも薄く、物足りなさを感じてしまった。もし「日テレにとって内容はさておき、ダウンタウンの特番を放送することの意義がある」という消極的な姿勢があるとしたら、何とももったいない。
とはいえ、何だかんだ言っても、日テレとダウンタウンの大みそか特番は期待して待つ自分がいる。
■次の“贔屓”は……MCに内村光良を立てた期待値大の特番! 『世界四大化計画』
今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、19日に放送されるNHK総合の特番『世界四大化計画 ~世界は3つで語れない~』(22:00~)。
「世界のさまざまなジャンルを代表する“三大○○”にもう1つ加えて四大化を目指す」というコンセプトで、今回は昨年8月のパイロット板、今年4月の第1弾に続く放送となる。
これまで「世界三大神秘湖」「世界を1つにした三大発明」「世界三大無謀な計画」「世界三大特殊車両」「世界三大貯蔵庫」が扱われてきたが、今回のテーマは「世界三大料理人」「世界三大輸送ミッション」。MCに内村光良を立てNHK内でも期待されている番組だけに、早々のレギュラー化を含め、その可能性をチェックしていきたい。