番組全体を見ると、あらためてワンコンセプトで統一されたバランスのいい構成と演出に気づかされた。地元住人に警戒心を抱かせない出川のもとには常に人が集まり、笑顔の輪が広がっていく……そんな旅情と人情をベースにした世界観は、土曜夜にふさわしい癒やしを感じさせられる。
さらに、充電がなくなり手で押すシーン、充電や撮影の許可を得ようと頭を下げるシーンは、芸能人らしからぬ腰の低さを感じさせ、随所に挟まれる地元住民との記念撮影シーンも効果的。「すいません」「待つのは全然いいんで」「いい町だね」「写真撮りましょうよ」など、出川の発する言葉はどれも謙虚で感じのいいものばかりだ。
また、当番組は「ロケ番組ではもちろんのこと、全バラエティの中でも一番テロップの多い番組ではないか?」という声も聞くが、これはむしろポジティブな意味のほうが大きいだろう。「出川が噛んでも言い直さないし、撮り直しもせずテロップで見せる」という方針は、そのまま笑いにつながっているし、通訳的な意味合いもあり、他番組のような「やりすぎ」「作為的」という感は薄い。
その他でも、ドローン撮影を多用した美景、スイカヘルメットとオーバーオール、ドラクエ風のマップなど、ゆるさを感じさせる要素が目白押し。BGMに、加山雄三「海 その愛」、佐野元春「約束の橋」、中山美穂「WAKU WAKUさせて」、ピンクレディー「UFO」、大江千里「夏の決心」などの風景や出来事に合わせた懐メロが使われていること、出川と上島さんのキス芸も映像は寸止めでイラスト処理したことなど、脱力感ただよう世界観の作り方は他局のテレビマンたちも参考になるものだろう。
この日の個人全体視聴率は、19・20時台民放トップの5.8%を叩き出していたように、当番組は土曜20時台という重要な時間帯における「安定感と安心感ナンバーワン」に見える(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。上島さんとの思い出を振り返る今回の再構成を見ても、視聴者の気持ちに寄り添うような優しさが感じられた。
2020年にはコロナ禍で撮影休止に追い込まれ、今なお難しい状況が続いているが、そんな時勢だからこそ当番組の優しさが心にしみるところもあるのではないか。
■次の“贔屓”は……あの企画と似ているのか!?『ものまね師弟バトル MANE-1』
今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、6月4日に放送されるフジテレビのバラエティ特番『ものまね師弟バトル MANE-1』(16:30~)。
番組内容詳細には、「映画『浅草キッド』では松村邦洋が柳楽優弥にビートたけしのものまねを完璧に伝授し話題に! モノマネ芸人いわく『人には必ず1つ、できるモノマネがある』…そう! そしてこの番組は、ものまねのプロが、『ものまね素人』の芸能人を弟子として採用! 徹底指導を行いステージに送り出してしまう、全く新しいものまね番組! 本当に似るのか? 似ないのか? それは師匠と弟子の絆と特訓次第!」などと書かれている。
ただこの番組名を見たときすぐに、昨年7月14日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の「声を操るプロ声優ならモノマネも上手いはず説」を思い出してしまった。
この企画は「プロの声優がものまね芸人8人からのレクチャーを受けてトーナメントで対決する」というもの。当時はTwitterのトレンド入りしたほどの企画であり、しかも荒牧陽子、Mr.シャチホコ、みかんの出演がかぶっているだけに、どんな違いを見せられるのか気になるところだ。