3日後、廃鉱山に場所を移してのセカンドステージがスタート。ただ、その3日間でそれぞれの商品が売れ、なかでも「アウトドアの荒井は5品25,500円を売り上げていた」ことが明かされる。
廃鉱山は無人島とは異なり、モノが豊富。3人の達人は次々にクリエイティブな力を発揮して商品を作り、フリマアプリの宇田川は経験とアイデアで出品を重ねていく。なかでもハイライトとなったのは、ここまでほとんど売れていないフラワーアートのNakajohが悩みながらもプライドを捨てて、フリマアプリの宇田川にアドバイスを求めたシーン。「出品カテゴリーをハンドメイドからインテリアに変更すること」をアドバイスされた結果、10,000円、1,000円、4,000円、12,000円の商品が次々に売れて、一気に2位へ浮上した。
さらに、フラワーアートのNakajohは勝負を賭けた30,000円の商品を作り上げ、フリマアプリの宇田川も3時間で15個を出品するなど、全員が持ち味を発揮する形でバトルは終了。優勝はアウトドアの荒井で出品43・売却15・売上54,800円、2位は廃材再生の野口で出品22・売却11・売上39,500円、3位はフラワーアートのNakajohで出品36・売却7・売上33,600円、4位はフリマアプリの宇田川で出品67・売却20・売上27,187円だった。
最後は廃鉱山保存会の人々が達人たちの商品を称え、会長が「素晴らしいですよ。もう建物も壊そうと思っていただけに、形を変えてこれからも生き続けるという希望があるじゃないですか。うれしいね、われわれも。ありがとうございました」とコメント。
それを受けたスタジオで、佐藤が「われわれがふだん当たり前のように見ている見方じゃない見方の可能性があるんじゃないかなっていう」、前田裕二が「SDGsの時代というか、『モノを大事に使おう』という観点で『再利用を考えないとな』って思いました」というコメントで番組は終了した。
「KASEGE」という錬金術をフォーカスした番組なのに、最後はSDGs……という取って付けたような終わらせ方に多少のモヤモヤを抱いた人は少なくなかったのではないか。それはSDGsを反映した番組制作を求められる制作側のモヤモヤのようにも見える。
■「芸能人のスタジオトーク」は必要か
特に3人のアーティストが手がける商品には目を見張るものが多く、「本物のプロフェッショナル」を思わせる説得力があった。「公平を期すために本名を隠した新規アカウントで出品する」というルールだったため、安価で入手できた人は「ラッキーだった」というより、「自分の目利きが素晴らしかった」と喜んでいるのではないか。
また印象的だったのは、苦戦しながらも、売れ始めるとアーティストとしての自信が蘇り、オーラを取り戻していく様子がリアルに描かれていたこと。日頃テレビのバラエティはキャラクターを色分けし、ドラマ性を高めるため、追い込まれたような表情や、まれに発した強い言葉などを強調して伝えがちだが、この番組にはそういう無理な演出は少なかった。つまり、出演者へのリスペクトが感じられただけに、本人たちからクレームを受けることはなさそうだ。
ただ、途中経過の発表など時系列があいまいなため、「バトルはどこまでリアルなのか」「本当のことなのか」が伝わってこなかったことも事実。後半でめまぐるしく順位が変わるシーンがあったが、番組としてドラマ性が高まるほど、「編集で印象操作しているのかもしれない」と感じさせられた。放送時にフリマアプリのアカウントが消されていることもあり、視聴者の「やらせがあるかもしれない」という疑念を拭えてはいないのではないか。
それでも「鹿児島県奄美大島沖の無人島」「福島県某所のかつてゴールドラッシュに沸いた廃鉱山」というロケ地は当企画にふさわしく、制作サイドの努力を感じさせられた。その一方で「バトル中の生活風景をほとんど描かなかったのは、彼らが芸能人ではなく一般人だから」なのだろうか。サバイバル感あふれるせっかくのロケーションを考えると、消化不良だったかもしれない。
そしてもう1つ気になったのがスタジオトーク。佐藤隆太、ヒロミ、ロッチのコカドケンタロウと中岡創一、高山一実、前田裕二がCM明けのたびにトークを交わしていたが、身になる内容や発見、共感などが乏しく、ただ間延びさせているだけという印象が残った。
制作サイドにしてみれば「番組に華を加えるゴールデンタイム仕様の演出」かもしれないが、それはあくまでスポンサーや局内向けではないか。現在の視聴者はせっかちになっているだけに、たとえば録画視聴した人はスタジオトークをスキップしたような気がしてならない。
各局の作り手たちは少しずつバラエティの構成・演出を変えていく努力をしているが、まだまだしがらみが多く、視聴者ニーズに合わせたアップデートがなされていない感が強い。「一般人メインのドキュメントバラエティが土曜ゴールデンで通用したか」というより、「放送局がその可能性を信じられていない」ことが伝わってきた。
■次の“贔屓”は……「アノ番組と同じ」は本当なのか!? 『呼び出し先生タナカ』
今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、15日に放送されるフジテレビ系バラエティ番組『呼び出し先生タナカ2時間SP』(20:00~)。
今春スタートの新番組でコンセプトは「担任のタナカ先生(田中卓志)がさまざまな生徒ゲストを呼び出し、熱血指導!“勉強”と“笑い”を融合したお笑い教育“一斉テスト”バラエティ」。
今回は2回目の放送だが、初回放送中から『めちゃイケ』の抜き打ちテストとの類似性を指摘されているほか、「『平成教育委員会』にも見える」などの声もあがっている。2回目の放送では、どこが似ていて、どこが違うのか。それとも、新たな発見のある番組になりそうなのか。今後の可能性も含め、チェックしていきたい。