テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第218回は、2日に放送されたTBS系情報番組『情報7daysニュースキャスター』(毎週土曜22:00~)をピックアップする。

前番組『ブロードキャスター』のスタートから約31年、『情報7daysニュースキャスター』になってから約13年半が経過。土曜夜の生放送情報番組として定着しているが、今春でビートたけしが降板し、三谷幸喜にバトンタッチした。

この日が三谷の初登場であり、どんなコメントやパフォーマンスを見せてくれたのか。「ボケまくったと思ったら、いきなりマジメに語り出す」など、つかみどころのないキャラクターだけに、生放送番組出演への期待感は大きい。

  • 三谷幸喜(左)と安住紳一郎アナ

    三谷幸喜(左)と安住紳一郎アナ

■第一声からボケを連発する新MC

番組冒頭、安住紳一郎が「こんばんは」と切り出すと、三谷が「4月2日土曜日、夜10時になりました。『情報7daysニュースキャスター』の時間です。今夜もどうぞ最後までお付き合いください」と流れるように語り出した。すかさず安住が「その部分は私がやりますから」とツッコミを入れたが、これは信頼関係という点で、さすがにアドリブではなく、三谷から事前の提案があったのではないか。

三谷は続けざまに「暑くなりましたね。今年初めての真夏日」と安住に語りかけたが、これは2つ目のボケであり、「今日は全国的に冷え込みました」と冷静にツッコミを入れられる。しかし、三谷はまったく意に介さず「ん?……人それぞれです」とボケ続け、安住に「やる気がみなぎってるのはよく分かりますけど、前半飛ばしますと息切れしますよ」と諭されてしまう。

さらに、「今のお気持ちは?」と聞かれた三谷は「うん。楽しいね! というか僕がまだどういう感じでここにいればいいのか、まだつかみかねている」。「私たちは三谷さんの映画やドラマ、舞台で楽しんできましたので、ぜひ三谷さんから見た世の中というものを教えてほしいなと思います」と振られて、「ただ断っておきますけども、僕はコメンテーターではないですから。総合司会ですから。それ以上のことを求めないように(とクギを刺しつつ)、さあ先へ進めましょう」とボケが止まらない。

三谷の肩書きは、前任者・たけしのボケを踏襲する形の「フリージャーナリスト」であり、胸には小さな初心者マークが貼られていた。初回ということを差し引いても、たけしよりボケの手数が多く、安住のツッコミが求められる機会は多くなりそうだ。

■「米アカデミー賞」をバッサリ

最初の話題は「第94回アカデミー賞」におけるウィル・スミスの平手打ち。映画監督でもある三谷の初登場にふさわしいタイムリーな話題であり、その意味で“持っている人”に見えた。

早速コメントを求められた三谷は「『アカデミー賞』ってテレビショーだから、僕も『日本アカデミー賞』に呼ばれたときは盛り上げようとするんですけど、だいたいオンエアでカットされているんですけど。ウィルもどこかに『盛り上げたいな』という気持ちがあったような気がするんですよね。でも『それをやりすぎちゃったかな』と思いまして。僕だったら、立ち上がって、彼(妻を侮辱するような発言をしたクリス・ロック)のところに歩み寄り、『殴るかな』と思わせてそのまま袖に去って行く。そしたらみんな喜んでくれるし、いい感じで終われるかなと思うんですけど」とたっぷり語った。

続いて、国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』に話題が移ると、「『僕自身はどうか』って考えると、コメディを作っているので。コメディってアメリカと日本と比べたら、絶対に日本のほうが質が高い気がするんですよ。見ている人の質が高いというか。だから『アメリカで認められたい』ってあんまり思っていなくて。だったら『日本でもっと認められたい』って思います」とコメント。つまり、アメリカの「アカデミー賞」をバッサリ斬ったのだが、「あまり忖度はせず思っていることをはっきり言う」というスタンスを明らかにしたのかもしれない。

さらに、同作へ出演していた女優・三浦透子について語り出し、映画を見てすぐに自らが脚本を手がける大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)への出演オファーを出したエピソードを披露。しかも「たぶん、明日のオンエアに出てくるんですよ」と宣伝につなげて安住の「NHKの宣伝するのやめてください」というツッコミを引き出した。

ボケを1つで終わらせないタイプの三谷は「僕は(TBSの)『坂上&指原のつぶれない店』を見ますよ。もちろん」とたたみかけて笑いを連続させる。序盤は三谷の独壇場であり、そのコメントは鮮度があるだけでなく、相当な高確率で笑いにつながっていた。