テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第216回は、19日に放送されたTBS系バラエティ特番『THE鬼タイジ』をピックアップする。
「人間に襲いかかる鬼を光線銃で打ち倒す」というコンセプトのアトラクション系ゲームバラエティで、今回が6回目の放送。「房総半島の人間たちが鬼化した」という設定のもと、主にホテル三日月でロケが行われ、16人が参加した。
まさかの大みそかゴールデンタイム放送から約3カ月。今回は翌日に類似性を指摘されている『逃走中』(フジテレビ系)の放送があっただけに比較は避けられず、真価が問われる放送だった。
■『逃走中』にはない芸能人エンタメ
ゲームの説明などはせず、寺田心が「鬼がいるかもしれない」、フワちゃんが「もう近いよ」と鬼を警戒する声を発して、いきなり本編がスタート。
続いてジェシー、田中樹、近藤春菜、寺田心の「チームSixTONES」と、春日俊彰、フワちゃん、潮田玲子、長男・りゅうせいの「チーム春日」の2チームが紹介された。ともに男性2人、女性1人、子ども1人の構成で、ファミリー層狙いであることがうかがえた。
画面右上には「房総半島を占拠した鬼53体を撃ち倒せ! 呪われた房総半島編」、左上には「鬼のこり53/53」の文字が表示されている。次に映されたのは、“ラスボス鬼”と参謀役・シターラの作戦会議。顔は明かされていないが、バナナマンの2人であることは明らかで、笑いを誘うトークパートだった。
まずは「チーム春日」がホテル館内に入り、フロントで女将役の山村紅葉と遭遇。『逃走中』の無機質なハンターとは異なり、「鬼だけでなく、俳優に鬼の手先を演じさせる」というエンタメ性を感じさせられる。この先、他の俳優、芸人、アスリートなども登場するだろうが、『逃走中』にない魅力と言っていいだろう。
視聴者にナレーションで「鬼がフロントに隠れている」ことを知らせ、「危ない」と思わせるサスペンス感を醸し出したが、潮田とフワちゃんが2体の鬼を撃退し、それぞれ3万円を獲得。ここで「鬼は光線銃で弱点の胸を撃つと人間に戻り、赤鬼は3万円、青鬼は10万円、ラスボス鬼は20万円獲得できる」ことが明かされた。
さらに、山村が宿泊台帳やPR撮影などのトラップを仕掛けるたびに、「誰が鬼にロックオンされているのか」を示す文字が表示される。これも視聴者にサスペンス感を与える演出で、ゲームバラエティに欠かせないものだ。ここで潮田が脱落し、6歳の息子・りゅうせいが一人残る形になった。ただ、この早期脱落は“子どもに肩入れして応援を促す”という意味の構成である可能性が高いのではないか。
さらに、3チーム目となる尾形貴弘、大久保嘉人、中澤佑二、三浦りょう太の「チームサッカー」が登場。渓谷エリアを歩き始めるが、「フェイクとして置かれた人形の反対側に鬼が隠れている」というトラップで大久保があっさり脱落してしまった。2時間で16人という参加人数を考えると、いわゆる“序盤のやられキャラ”が必要であり、4人の中からターゲットに選ばれた潮田と大久保は不運としか言えない。
■モノマネと漫才に絡めた鬼の襲撃
映像は「チームSixTONES」に切り替わってホテル最上階の客室へ。マイケル富岡と金髪美女にふんした箕輪はるかが登場し、背後から相方の春菜が狙われたが、見事撃退に成功した。
次に4チーム目となるラミレス、小栗有以、宮下兼史鷹、草薙航基の「チームラミレス」が登場し、廃墟エリアを歩き始める。居酒屋で納言・薄幸に出迎えられ、乾杯のタイミングでラミレスが鬼に襲われるが、こちらも見事に撃退。さらに、山手線ゲームの最中に畳の下から出てきた鬼に襲われるが、またもラミレスが撃退した。
続いて「チーム春日」が「大御所だらけの鬼歌謡ショー」に遭遇。阿部寛にふんしたラパルフェ・都留拓也と松本人志にふんしたJPがMCを務め、神奈月が吉川晃司、井上陽水のモノマネをしながら鬼を放つが撃退する。続いてモグライダーが登場し、『M-1グランプリ』で見せた美川憲一の漫才を始めると本人が登場。鬼を招き入れてリーダーの春日が脱落させられてしまった。ここはゲストを大量投入して笑いを取るコーナーであり、作家としては腕の見せどころだったか。
その後の経過をつづっていくと……
大浴場へ向かった「チームSixTONES」は2体を撃退するが、“ダイバー鬼”に潜水で近づかれた田中が脱落。
渓谷エリアを歩く「チームサッカー」のもとに松木安太郎が現れ、“サッカー鬼”を呼び寄せてボールで攻撃を受けるが、2体を撃退。
廃墟エリアをゆく「チームラミレス」が鬼屋敷に入り、草薙が脱落。
「チーム春日」が山村紅葉、マイケル富岡、箕輪はるか、“鬼ケンサンバ隊”、キンタロー。に遭遇し、虚無僧4人、阿波踊り4人、獅子舞3人に襲われ、りゅうせいが脱落。
「チームSixTONES」がバギーフィールドへ向かい、とにかく明るい安村が登場する中、“ジップライン鬼”の襲撃で春菜が脱落。さらに“BMX鬼”は撃退したが、“暴走バギー鬼”の襲撃で寺田心が脱落。
その攻防が激しかった一方で気になったのは、楽しげなアトラクション。「ホテル三日月ってこんなに楽しいところなの?」「このバギーやってみたい」と思った視聴者は多かったのではないか。ホテルのロケ協力は感染予防の観点からハイリスクだったはずだが、良いプロモーションになったことは間違いない。
廃旅館を訪れた「チームラミレス」が、押し入れから現れた鬼によって宮下が退場。さらに林家三平が登場し、小噺の最中に鬼を放つが、すべて撃退した。
「チームサッカー」が岡島秀樹、森福允彦のふんする“野球鬼”に遭遇し、その投球を被弾した三浦が脱落した。