昨年からは改善されていたとは言え、今年も構成は適切だったとは言えないのかもしれない。冒頭のゆりやんレトリィバァインタビューや、ファイナルステージ前の歴代王者振り返りが複数回あるなど、現在の視聴者が「見たい」と思うか微妙な構成が目立ったのも事実。序盤で野田が「スタッフ側の緊張感ハンパないんで。みんな人生懸けてます」とコメントしていたが、作り手側の「盛り上げなければいけない」という思いが空回りした感もあった。

ただ、王者決定の瞬間、勝ったお見送り芸人しんいちも、負けたZAZYも号泣。特にZAZYは昨年に続いてコメントすらまともにできないほど落胆して視聴者の共感を誘い、Twitterのトレンドワード1位になるほど心を揺さぶるものがあった。

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最後は、お見送り芸人しんいちが涙声で、「10年以上の先輩も面白い方めっちゃいっぱいいますんで、ライブに来てほしいです」とコメントして番組は終了。ネット上に「今年は面白かった」という声があふれていたが、それはネタの優劣だけでなく、賞レースの醍醐味である人生を懸けたガチンコ感が伝わったからではないか。視聴率では『M-1グランプリ』や『キングオブコント』に勝てないかもしれないが、緊張感や熱狂度では同等レベルの魅力があることを証明できたのかもしれない。

あらためて大会全体を振り返ると、やはり1ネタ3分というくくりは短く、「多くのネタを詰め込めるフリップ芸や歌ネタに有利」という現実に変わりはなかった。特にZAZYのように紙からデジタルに変えてさらに手数を増やされてしまうと、よほどの名手でない限り漫談で優勝することは難しそうだ。

そもそも1人で笑わせるのは、技術とネタの両面で「漫才やコントより難しい」とも言われる上に、昨年から出場資格が「芸歴10年以内」に変わったことで、笑いのクオリティを担保することが難しくなっているのではないか。

また、ストレートで決勝進出した7人は偶然なのか、グレープカンパニー、ケイダッシュステージ、プロダクション人力舎、マセキ芸能社、吉本興業の東京と大阪、ワタナベエンターテインメントと、各事務所から1人ずつ選ばれていた。まるで「各事務所のイチ押し若手ピン芸人をピックアップした」ように見えてしまったのだが、それは「芸歴10年以内」という縛りの不可解さが頭にあるからかもしれない。

昨年末の『M-1グランプリ2021』で芸歴20年超の錦鯉が優勝して感動を抱かせたこともあり、「なぜ『R-1グランプリ』だけこんなに出場資格を厳しくしなければいけないのか」という疑問は今年も解消されなかった。

このところ『R-1グランプリ』は、審査員の選び方、採点方法、復活ステージの投票など、「『M-1グランプリ』が支持されている点を踏襲しよう」というなりふり構わぬ姿勢が見られるだけに、出場資格についても考えどころかもしれない。

■次の“贔屓”は……すべてはガチャガチャで決まる! 『丸投げナインティナイン』

『丸投げナインティナイン』に出演するナインティナイン (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、13日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『ガチャガチャの言う通り!!~丸投げナインティナイン~』(20:00~)。

『R-1グランプリ2022』の翌週に放送されるのは、何とも思い切った特番。ナインティナインがMCのロケ企画であること以外は、「誰と、どこへ行き、何をするのか」が決まっておらず、そのすべてをガチャガチャで決めるという。

しかもロケメンバーの候補には、梅沢富美男、狩野英孝、具志堅用高、高地優吾(SixTONES)、小芝風花、錦鯉、本間朋晃、松下洸平、山田孝之が挙げられ、早朝に集められたにもかかわらず、ガチャガチャで選ばれなかった人は帰ってもらうという。

ガチャガチャを使った演出は、どれくらい盛り上がるのか。視聴者にどれくらいガチンコ感を抱かせられるのか。バカバカしさを多分に含む気楽さは、現代に合いそうな感があるだけに注目しておきたい。