テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第211回は、13日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『妖怪ランキング大百科 鬼強い! 鬼とヤバいもののけたちが大集合!』(19:00~)をピックアップする。

何と「妖怪」の3時間特番であり、「日本に語り継がれてきた妖怪たちをプロフェッショナル集団による独自ランキングで紹介していく」というコンセプトで放送された。

当日夜はアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』の最終回が放送されたほか、他局のドラマ『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)で主演を務める小芝風花がゲスト出演。何かと気になるところが多い特番だった。

  • (左から)『妖怪ランキング大百科』MCの山崎弘也、柴田英嗣、劇団ひとり

    (左から)『妖怪ランキング大百科』MCの山崎弘也、柴田英嗣、劇団ひとり

■視聴者をグッと引き込んだ一反木綿

番組は「『妖怪ランキング大百科』。日本に3,000種類以上存在するという妖怪たちを独自ランキング!」という簡単なナレーションから、さっそくランキングに突入。1つ目の「見たらテンション上がっちゃう! 妖怪目撃報告ランキング!」がスタートした。

第5位は『ゲゲゲの鬼太郎』でおなじみの一反木綿。その姿がトレーディングカードゲーム風の画像で紹介されたほか、「攻撃力40 恐怖度35」と書かれている。すかさずワイプ画面の劇団ひとりが、「これ目撃されてるの?」と驚きの声をあげた。

さらに、「出没地:日本全国(特に九州) 大きさ:約10m 習性:空を舞い 人を襲う 必殺技:一反絞り 一反誘拐」という情報を追加紹介。BGMにアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のテーマソングが使われていることも含め、「まずはキャッチーな妖怪で視聴者を引きつけよう」という意図が見られた。

しかし、一反木綿の紹介はこれだけで終わらない。CGを使って人を襲うシーンを再現映像のように見せたほか、「一反木綿をとらえた激レア映像!」をピックアップ。まず、2011年と2020年に熊本県で撮られたYouTube動画が映し出されたが、どちらも確かに一反木綿のように頭があり、動いているようにも見える。また、埼玉県で2017年に撮られた3つ目の動画もほぼ同様の姿形であり、「突然消える」という別の特徴も見られた。

最後は一反木綿の必殺攻撃として、人の顔に巻き付く“一反張り付き”、首に巻き付いて絞める“一反絞り”、グルグル巻きにされて連れ去る“一反誘拐”を映像で再現。「『ゲゲゲの鬼太郎』では正義の妖怪として描かれている一反木綿だが、実はコワ~イ妖怪なので目撃した際はご注意を」というナレーションで締めくくった。

たった5分程度の紹介映像だったが、オープニングのインパクトとしては強烈。豊富な情報量、ほどよい説得力、十分なエンタメ性……バランスのいい見せ方も含め、制作サイドの地道なリサーチと映像の作り込みを感じさせられた。開始5分で「この特番は期待できる!」と感じた人が多かったのではないか。

■『鬼滅』の戦闘シーンを思わせる映像

続いて4位は小さいおじさん「攻撃力0 恐怖度50」。東京・立川市の玉川上水側道で撮影したYouTube動画が紹介されたが、なぜか小さいおじさんは裸のため、山崎弘也が「アキラ100%型なの?」と笑わせた。このゆるさと脱力したムードは、昭和の超常現象番組を思い起こさせる。

3位は人面犬「攻撃力5 恐怖度50」で、90年代の雑誌やビデオ『ザ・人面犬』の映像を使って紹介。ほどなくスタジオトークが始まり、“妖怪のプロフェッショナル”として荒俣宏が登場した。その背景は妖怪のイラストを描いた背景に出演者を合成した『Youは何しに日本へ?』(テレビ東京系)などと同じセット不要の低予算演出。その分、妖怪のほうに予算を回しているとしたら、視聴者にとって素晴らしいプロデュースと言っていいだろう。

2位は河童「攻撃力80 恐怖度65」で、ドラマ『妖ばなし(あやかしばなし)』(TOKYO MX)や、アニメ『まんが日本昔ばなし』(MBS・TBS系)の映像をピックアップ。さらに、河童伝説が残る長崎県生月島でインタビューを行い、「お父さんが河童と相撲をとった」というコメントを引き出したほか、荒俣宏が“妖怪メモ”と題して「河童の肛門は3つ、指は3~5本ある」という豆知識を紹介した。

1位は座敷わらし「攻撃力0 恐怖度10」で、こちらも『まんが日本昔ばなし』の映像と、実は「子どもなのに超怪力」などの豆知識を紹介。続いて旅館での「座敷わらし体験談」、写真、映像が映されたが、「なぜか着物ではなく、白ワンピース風の服を着ている」という微妙なもので再び笑いを誘った。番組を見ていた日本中の子どもたちもゲラゲラ笑ったのではないか。

ここまでの放送でちょうど30分が経過。やはり映像の濃密さは素晴らしいが、さらに「『鬼滅の刃』に始まった空前の鬼ブーム」「一千年の昔より人々を苦しめてきた」のナレーションから「鬼強くて手がつけられない! 最強の鬼ランキング」という目玉企画でたたみかける。

5位は百目鬼(どうめき)「攻撃力70 恐怖度50」で、妖怪ハンター・藤原秀郷との戦いをイラストで再現。まさに『鬼滅の刃』の戦闘シーンを思わせるもので、ファンたちは夢中になって見ただろう。

4位の鬼婆(おにばば)「攻撃力60 恐怖度60」も、人を食べるという、こちらも『鬼滅の刃』を彷ふつ。ここで初めてホラー的な演出が見られたが、笑いとの緩急が鮮やかだった。

ただ、鬼のランキングは一旦ここでストップ。やはりアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』の最終話につなげるために、トップスリーは終盤に見せたいのかもしれない。