テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第196回は、24日に放送された日本テレビ系トーク番組『おしゃれクリップ』(毎週日曜22:00~)をピックアップする。
前回ピックアップした『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日)の裏番組で、今月10日のスタートから今回が3回目の放送だった。ここまでの2回では、反町隆史、きゃりーぱみゅぱみゅが出演していたが、今回のゲストは東京オリンピック女子空手形の銀メダリスト・清水希容選手。他番組とは明らかに異なるゲストの人選であり、どんなトークになるのか興味深い。
■「空手界の綾瀬はるか」という紹介
番組はMC・山崎育三郎の「『おしゃれクリップ』、本日はこちらのクローゼットルームから始まります」という言葉からスタート。続いて、「MCは山崎育三郎と井桁弘恵。この番組ではゲストの普段のイメージとは違う“おしゃれ”を身にまとい、まだ見ぬ素顔。そう、ゲストの中のもうひとりのワタシ。を語ります」というナレーションが聞こえてきた。
ちなみに前回のナレーションは、「この番組は『私の中の、もうひとりのワタシ。』をコンセプトにゲストがふだんのイメージとは違う服や憧れのメイク・髪型などのおしゃれで登場します。そのおしゃれを通して意外な素顔をお伝えする番組です」。スタートしたばかりの番組だけに、「どんなフレーズで伝えれば分かりやすいのか」を調整している最中なのかもしれない。
早速、日本代表のジャージを身にまとった清水選手がスタジオに登場。「東京オリンピック後、トーク系の番組は初めて」というから、やはり新鮮さがあり、作り手にしてみたら攻めのキャスティングだろう。
最初のトピックは、「清水選手のもうひとりのワタシ。とは?」。このお題に、清水選手は「本当に私は自分に自信が持てなくて。常にネガティブで、ポジティブになれないので、自分と闘っている感じです」とコメント。しかし、ここで井桁は「憧れの方とかはいらっしゃいますか?」という唐突な振りを入れ、「綾瀬はるかさんが好きですね。ストイックで何事にもまっすぐな感じの印象があるので」という返事を引き出した。
すると、間髪入れずに山崎が「“空手界の綾瀬はるか”と呼ばれているらしいですけれども、それに関しては?」と続け、「(首を横に振りながら)いや、もう……申し訳なさすぎて。大好きなので『恐れ多い』っていう気持ちでいます」と謙虚に否定し、なごやかなムードが生まれた。
山崎と井桁のMC経験が浅く、今回はゲストがタレントではないだけに、ある程度は台本通りのようなトークも仕方がないのかもしれない。ただ、30分の短いトーク番組なら、このような取ってつけたようなくだりはカットしたほうが、出演者と視聴者のためになるのではないか。
■9枚の写真を軸にトークがスタート
続いて、「そしてクローゼットルームには、事前の取材をもとにスタイリストがセレクトしたアイテムが並ぶ」のナレーションが流れ、ファッショントークがスタート。「襟付きのシャツ系が多い」という清水選手に、井桁が「やわらかい雰囲気の方なのでニットのカーディガンとか着ているところも見てみたい」「(ハットを手に取って)こういうのはかぶったりしますか?」などと勧めていく。
一旦CMをはさんだあと、「私の中のもうひとりのワタシ。とは」という呼びかけで着飾った清水選手が登場。山崎が「めちゃめちゃ素敵じゃないですか」、井桁が「さっきジャージを着られていた清水さんですよね?」とホメられた清水選手は「自分が一番ビックリしてます」「こんな衣装着させていただいてすごくハッピーです」と笑顔を見せる。この番組は「ギャップとビフォーアフターを見せる」ことに重きを置いているのだろう。
清水選手が選んだファッションのテーマは、「自分に自信が持てる」。これに「自信を引き出すのは力強い色の組み合わせ。黒の上下に本人こだわりのビビッドなイエローのコート。さらに、個性的なデザインのニットで、『実はネガティブ』という27歳の清水希容を勇気づけ、大胆に見せるスタイリング」というフォローのナレーションを入れた。
ここでようやくトークがスタート。井桁が「ここからは清水希容さんの素顔とセンスが分かる“9CLIPS”を用意しました」と話し、画面いっぱいに「空手のチャタンヤラクーサンクー」「市川海老蔵」「読書もトレーニング」「ピクトグラム」「ひまわりLOVE」「17歳」「ピンキーリングの刻印」「歌」「Keyword自分を信じて!!」と書かれた9枚の写真が映し出された。
それぞれのトークでは、同じ会社の先輩でカヌー日本代表の羽根田卓也選手に対するLINEでの塩対応、ピクトグラムのモデルになった形に山崎と井桁も挑戦、市川海老蔵より息子の勸玄くんが好きなどの笑いどころも。
また、「高校年生のときからずっと聴いていて、試合の前日の晩に必ず聴いてきた」というFUNKY MONKEY BΛBY'Sの「あとひとつ」が流れると、「泣きそうになります。ヤバイ……」と本音を漏らすシーンもあった。手練れのベテランMCではなく、山崎と井桁のコンビだからこそ清水選手は話しやすかったのかもしれない。