最後の関係者は、中学・高校で英語スピーチコンテストに出場したときに指導してくれた恩師。夏目は「すごいうれしい。お顔を見られただけで」と思わず涙を流し、中学1年生のころの夢が「ニュースキャスターになりたい」であり、「私の原点です」と話した。芸能界引退直前の今、活動の原点を振り返るところまで誘導できたことで、制作サイドの目的は達成できたのではないか。
同級生からの「将来の夢は何?」という質問を投げかけられた夏目は、「今まではすごく特別な世界にいさせてもらったので、普通に平穏に暮らせればいいなと思います」とコメントした。あらためてこの言葉を今、引き出すことに意義があり、これも今回の放送では欠かせないものだっただろう。
ほどなくスタジオ内の照明が落とされ、スポットライトを浴びた鶴瓶が締めのメッセージを語り始める。
「僕は大ファンだったんですよね。だからいろいろな報道出たときは腹立ってしゃあなかったんですけど。彼女もホントに苦労されたと思うんですが。結婚決まったときは本当にうれしかったですね。『ああ、よかった~』って。そして有吉に会ってホントにうれしかったですよ。『これは穏やかな生活が、この男とやったらできるな』っていうのを安心しました。勝手に父親みたいになってるんですけど。有吉、三久をひとつよろしくお願いしたいと思います。一緒に足をつるまで末永くお幸せになってください。今日のゲストは夏目三久さんでした」と話すと、夏目は涙をにじませながら微笑んでいた。
それでも鶴瓶の言葉は以前より「喜ばせよう」「泣かせよう」というニュアンスが薄くなり、あっさりしているような気がする。トークの流れを踏まえて強弱をつけているところもあるのだろうが、「テレビは気軽に見たい」という人が増えた現状に合っている感があるのはさすがだ。
次回予告のあと、藤ヶ谷が「鶴瓶さんがカッコつけてるのって初めて見たんですよ」と声をかけ、鶴瓶が「すいません。お見苦しいところを……」と答えてもうひと笑いを追加。3人でスタジオを出るシーンまでしっかり映し、藤ヶ谷から「ずっと前から結婚を考えていました?」と尋ねられた夏目が「そうですね。うんうんうん、『この人とかな』と思っていました」と返したところで番組は終了した。「最後の最後まで視聴者を引きつけるトークを詰め込むんだ」という作り手たちのプライドを感じさせられる。
■歴代パートナーを上回る藤ヶ谷
夏目が「台本見て何にも書いてなくてビックリしました。1ページだけなんですね」と驚いていたように、この番組の収録は鶴瓶と藤ヶ谷のトーク力によるところが大きい。それを支えているのは、2人が自ら出向いて行う事前取材であり、「そこで得た情報をどう使ってゲストの素顔と魅力を引き出すのか」を制作サイドと詰めている様子が伝わってくる。その意味で夏目が最後に出演するトークバラエティとしてこの番組はふさわしかった。
多忙な中、ライフワークのように事前取材を行う鶴瓶のフットワークは、相変わらず大物らしからぬものがあった。まるで「そうしなければ他のトーク番組との差別化ができない」「これくらいでなければ俺がやる意味がない」と言っているように見えてしまう。トークの内容だけでなく、その精力的で楽しそうな鶴瓶の姿が、休日の始まる金曜夜の癒やしになっているのかもしれない。
一方の藤ヶ谷は就任時、「なぜ男?」「ジャニーズ忖度がひどい」などと批判のほうが大きかったが、見事に鶴瓶の相棒をこなしている。この日も一歩引いたポジションを取りながら、折を見て「鶴瓶のラップダイエット」を暴露したり、鶴瓶のボケを拾ってツッコんだりなどの姿が見られた。かつて女優やモデルがアシスタントを務めていたときより、トークテンポがよく、笑いのバリエーションも多彩で、鶴瓶もやりやすいのではないか。
この日の放送でも、夏目のトークを細やかな編集でギリギリまで詰め込んでいたが、これも2人の良好な関係性を物語っていた。トーク番組そのものは依然として逆風が続き、ロケ絡みのものですらあやうくなっているが、番宣という機能性を除いたとしても『A-Studio+』は盤石だろう。
■次の“贔屓”は…仲良し2人のトークにも注目!『中居ウエンツとアウトエイジ』
今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、10月3日に放送される日本テレビ系バラエティ特番『中居ウエンツとアウトエイジ』(23:00~)。
中居正広とウエンツ瑛士が「年齢という枠にとらわれず、若者文化で活躍するシニアを“アウトエイジ”と名付け、その生き様を紹介する」というコンセプトの特番。71歳の自称・最高齢コスプレイヤーと、海外の大会で受賞を果たした64歳のダンサーが登場するという。
親交の深い中居とウエンツがダブルMCを組んだだけあって、「1時間特番なのに3時間も収録した」(中居)というからトークの盛り上がりが期待できそうだ。「生き生きとしたシニアをどう見せていくのか」という高齢化社会にフィットした企画であり、今後の可能性を踏まえてピックアップしておきたい。