病気に由来するむくみもあるものの、私たちの大半が悩まされているものは、それとはまた別物だ。病気ではない人の脚のむくみの多くは、長時間座りっぱなし、あるいは立ちっぱなしの職業によくみられる。
「足先まで心臓のポンプ機能で運ばれてきた血液は、座っていても重力に逆らってまた戻っていきます。そのときにはふくらはぎなど筋肉の動きによるポンプ作用が助けとなりますが、ずっと立っていたり座っていたりするとその動きがないため、むくみやすくなります。また、座っているいすの高さが合っておらず、太ももの裏がいすの座面で圧迫されると、スムーズに戻ることの妨げにつながります。これは、筋肉や脂肪の少ない方に起こりやすいです」
つまり、適度に立ったり座ったりすることで太ももやふくらはぎの筋肉を刺激し、血液を循環させるポンプ作用を促すことがむくみ防止につながるというわけだ。以下の2点が該当する人は脚がむくんでいる可能性があるため、セルフジャッジ時に役立ててほしい。
(1)弁慶の泣き所が凹む
先述のようにむくみには押すと凹むものとそうでない種類がある。普段私たちが悩まされている脚のむくみは、一般的には押すと凹み痕が残るケースが多い。そのため、自身で脚の弁慶を押してみて、凹み痕が残るかどうかをチェックするとよい。場合によっては、押さずとも靴下の跡がぐるりと食い込んだように残っている人もいるかもしれない。
(2)夕方になると靴がきつく感じる
朝に履いてきた靴がきつく感じたり、冬にブーツのファスナーが上がらなかったりするといった症状も、むくみが原因と考えられる。また、脚が重だるく感じるのも症状の一つだという。
生活習慣でできるむくみ対策
脚のむくみは、毎日の生活習慣を見直すことで解消できるケースもある。そこで、今日から誰でも実践できる対策を長谷川医師が解説してくれた。
■ストレッチでふくらはぎの筋肉を意識的に使う
「仕事中や出先で脚がむくんできたと思うときは、まずはつま先立ちをして上げた踵を下ろすようにふくらはぎの筋肉を使って血液の流れを促します。座りながら同じように踵を上げ下げしてもよいですが、足元に余裕があれば膝を伸ばし、同様につま先を手前に反らしたり、逆に遠くに伸ばすようにしたりすることでふくらはぎの筋肉を動かします。長く同じ姿勢で座っていると、特に膝裏や足の付け根など曲がった部分は滞りやすいので、時々は立ち上がり膝の屈伸などをするとよいでしょう」
一旦むくんでしまうと、血流やリンパの流れ道がより狭められかねないので、自発的にこれらのストレッチを一日に何度かすれば、むくみの予防にもつながる。
■シャワーではなく、お風呂に入る
「ご自宅では、入浴時は湯船にしっかりつかりましょう。お湯に入ると末梢血管が拡張し、血流の改善が期待できます。また、お風呂でマッサージをすると温まるだけでなく、むくんだところに水圧がかかるため、その効果も高まります」
■毎日の食事に気をつける
食事に関するポイントは2点ある。1つめは「塩分を控える」。塩分を摂(と)りすぎると吸収された塩分の濃度を調節しようと体が水分を蓄えようとするため、結果的に体内の水分が増えてしまう。普段から塩分を摂りすぎないよう、薄味の食事を心がけることが大切となる。
2つめは「野菜や果物を多く摂取する」。野菜や果物に多く含まれるカリウムは、塩分のナトリウムを体の外に排出するのを助ける働きがある。そのため、毎日の食事にできるだけ多くの野菜・果物を取り入れるとよい。ただし、一般的な脚のむくみとは異なる、疾患由来のむくみでは事情が異なる。
例えば、腎疾患や栄養状態などにより、野菜が制限されたりたんぱく質の摂取が重要となったりすることもある。毎日食べる食事だけに、むくみの原因をきちんと突き止めたうえで、自分にふさわしいものを摂取するようにしてほしい。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 長谷川充子(ハセガワ・ミチコ)
整形外科専門医。日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。日本整形外科学会認定スポーツ医
大学病院の整形外科、総合病院の整形外科医長を経て、現在は整形外科クリニックに勤務し、整形外科の診療をしている。 En女医会所属。
En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。