一日中デスクワークに勤しむ人たちに起きやすいのがむくみ。特に男性よりも女性の方が深刻な症状が出やすく、夕方になると足がパンパンに膨れ、朝に履けていたブーツやパンプスが履けないというケースは「女性あるある」の一つと言えるだろう。
直接に命を脅かすという可能性は少ないが、悩んでいる人にとっては切実な問題となるむくみについて、整形外科専門医の長谷川充子医師に話をうかがった。
むくみが生じる理由は血液の滞りにあると知っている人も多いだろうが、あらためてその具体的な機序を理解しておこう。
血液は、私たちの体の中で栄養や酸素を末梢や臓器まで運ぶ役割があり、動脈を通って末梢や臓器に運んでいる。末梢部分で毛細血管に達すると物質の交換を行い、静脈を通じて戻っていく。
毛細血管は細いところでは内径5マイクロメートルと、赤血球がやっと通れる程度の細さの管で1マイクロメートルの厚みの壁を血管外と隔てている。血管の外側の液体は間質液と呼ばれ、その水圧や浸透圧の勾配により、血管内を成分や水分が行き来して交換している。むくみとは主に、何らかの異常で血管外の細胞と細胞の間(間質)やリンパに液体が異常に多く貯留した状態を指す。
では、なぜ多く貯留してしまうのだろうか。
「理由の一つは、毛細血管での血管内と血管外とのやり取りをする透過性の異常、つまり血管内から血管外の間質へと出る液体が多くなることです。もう一つは、毛細血管内圧が高くなり、血管内から外への水分が多く押し出される、もしくは間質から血管内へと戻る水分が少なくなることですね」
病気が原因でむくみが生じている可能性も
この2つの理由の裏には、何らかの疾患が潜んでいる可能性もゼロではない。例えば、水圧のバランスがくずれた心不全や腎不全、さらに浸透圧のバランスが崩れる原因となりうる肝硬変や悪性腫瘍、ネフローゼ症候群に低栄養などが考えられるという。
また、血管壁の透過性の異常は血管炎などの炎症やアナフィラキシー、薬剤性などが引き起こしているケースが想定され、これらは主に全身にむくみをきたす可能性がある。
「局所にむくみをきたす原因として挙げられるのは、血液の流れを妨げるような血栓性静脈炎や腫瘍などによる物理的な圧迫などです。火傷などでも、局所の透過性に異常をきたして局所にむくみを生じさせます。これらのむくみは、主に押すと凹むような特徴があります。一方で、押しても凹み痕があまり残らないリンパ浮腫(ふしゅ)や甲状腺機能低下症などが挙げられます」
これらの原因疾患については、医療機関での精査や治療が必要となるため、生活習慣などによるむくみではないと感じたら、原因疾患がないか一度医師に診てもらうのがいいだろう。