創業107年を迎える総合リゾート運営会社である星野リゾートが、ノーコードツールを導入して業務改善を進めている。目指すのは全社員のIT人材化だ。まだ道半ばではあるものの、今に至るまでの道のりには、どんな学びがあったのだろうか? 10月26日に開催されたTECH+セミナー「ローコード/ノーコード開発 Day 2021 Oct.」で星野リゾートの情報システムグループ 小竹潤子氏が語った。
「情報システムの手が回らない!」から決断したノーコード導入
星野リゾートがノーコードツールを導入したのは、2014年のことだ。当時、情報システムグループには4名しかおらず、開発や改修を依頼したい現場側は常に”順番待ち”の状態。この状況を解決するために、ノーコードツールの導入を決めたのである。「社員が自分で業務改善できるようにするという目的だったが、情報システムグループとしても、開発の速度が上がることを期待していた」と小竹氏は説明する。
ノーコードツールが選ばれた理由はもう一つある。星野リゾートでは就業規則で社員が自らイノベーションを行うことを掲げており、社員が意見を出し合えるフラットな組織文化を大切にしている。こうした社風がノーコードツールの概念にマッチしたのだ。ただし、同社が掲げる”全社員IT人材化”という目標は全社員がエンジニアになることではない。「手段の1つとして、『適切にシステムを活用する』という選択ができるようになることを目指している」と、小竹氏は述べる。
星野リゾートがノーコードツールとして選んだのは、サイボウズの「kintone」だ。kintoneの魅力として小竹氏は「汎用性の高さ」を挙げる。同社では、kintoneアプリをカスタマイズする「gusuku Customine」、ワークフローを実現する「collaboflow」などのほか、外部APIとのデータ連携には「ASTERIA WARP」、帳票出力には「Docurain」など、業務に応じてさまざまなツールと組み合わせて利用しているという。
では、具体的にどのようなシステムを作っているのか。現在使用しているシステムは、経費や出張の申請ワークフロー、入社時の事務処理、社内公募フロー、Go To Travelの対応など800ほどがあるが、講演では、そのなかからノーコードツールを使って開発した最近の例として、助成金活用のレポート作成の事例が紹介された。
日本では、コロナ禍で影響を受けた業界を対象に教育訓練に対して助成金を出す制度を実施しているが、その利用フローをシステム化したのである。小竹氏によると、2日でひな型を作り、それを現場のスタッフに見せて相談しながら開発を進め、実質3週間で初期リリースに漕ぎ着けたという。