社会を取り巻くデジタル環境の変化に伴い、企業に求められるセキュリティの考え方も日々変化している。既存の考えでは通用しない、デジタル時代のセキュリティへの新たな発想とはどのようなものなのか。
本稿では、10月6日~8日にガートナー ジャパンが開催した「セキュリティ&リスク・マネジメント サミット2021」のなかから、米ガートナー プライバシーアナリストのバート・ウィレムセン(Bart Willemsen)氏による講演「プライバシーの展望:2022年」の模様をレポートする。
IoTからIoB(振る舞いのインターネット)へ
冒頭、ウィレムセン氏は「プライバシーは本質的に変化している」と述べ、社会の変化に合わせて、プライバシーの考え方が大きく変わっていく可能性を示唆した。今後、社会において我々の行動全てが何らかのかたちで登録され、監視され、個人情報があらゆるところに偏在するようになると指摘し、これまでの”モノのインターネット(IoT:Internet of Things)”から、”振る舞いのインターネット(IoB:Internet of Behavior)”への移行が起きるという。
IoBとは、人の身体の動き一つ一つから購買活動などに至るまで監視できる環境下において、人間の振る舞い全てを「行動」としてとらえ、分析することを指す。ガートナーでは、このIoBが2025年末までにはさまざまな場所で実施されるようになると予測している。ウィレムセン氏は「振る舞いの良し悪しは必ずしも重要視されない」と前置きしつつ、「IoBは人の行動を分析し、適切性と一致させることを目指す」ものだという。
例として挙げられたのは、保険分野だ。同氏は、ハンドルの切り方や速度、ブレーキの踏み方といった運転における振る舞いによって、保険会社やレンタカー会社が異なる価格設定をしている事例を紹介した上で、「IoBにおいて、振る舞いが起点となるシグナルはデジタルだけでなく、物理的な世界にも送られ、人の行動変容を促す」と説明した。