DataRobotは7月27日、「AI Executive Forum 2021」をオンラインにて開催した。「ビジネス変革を加速する日本流DX~AI人財育成と組織化の実戦でDXは加速する~」をテーマに掲げた同フォーラムでは、経営者や役員、各事業部門の管理職を対象に事例を交えたセッションを実施。日本流のDXを実現するためのヒントが示された。
「真の日本流DXを実現するAI人財育成 ~実践・推進者が語るDX推進の成功と失敗」と題して行われた対談では、ダイハツ工業 東京LABO データサイエンスグループ グループ長 太古無限氏、ヤマハ発動機 IT本部デジタル戦略部 主査 大西圭一氏が登壇。DataRobot Japan AIサクセスマネージャー 岡崎大道氏がモデレーターを務め、社内におけるAI人材育成/教育の進め方や、現場を動かし、経営層を巻き込むための”勘所”などについて、実体験に基づく示唆に富んだ内容が語られた。
車輪の再発明は不要! 社外と関係を築き、社内を巻き込む活動の進め方
――ヤマハ発動機さんとダイハツ工業さんはかなりの頻度で情報交換されていると聞いています。社外と情報交換していくことの価値をどのように感じていますか?
大西氏:社外の方と話すのはとても貴重な機会だと思っています。デジタル戦略部ができたばかりの頃、ベストプラクティスが社内にあるわけではありませんし、自分たちでつくっていかなければならなくて、すごく孤独感があったんです。多分、今DX推進部隊をつくって進めている皆さんも苦しいんじゃないかと思います。我々のケースだと、いろいろなツールを購入した縁をたどって、同じツールを使っている企業に話を聞きに行ったりしました。もちろんそれは勉強にもなるのですが、「一人じゃない」と思えるのはいちばん大きな価値です。
太古氏:つまずくポイントは、似ていることが多いんです。競争領域以外なら、こんなことをやって失敗したんだけど、という話をすることで生の意見が聞けて、自分の組織に置き換えたら……というヒントも隠されています。大西さんとも定期的に情報交換しますし、それ以外にも関西の製造業のコミュニティやDataRobotのコミュニティにも参加しています。自分たちがより進みやすい方向性を探るためのヒントを得られるので、非常に貴重な機会です。
――デリケートなところは回避しながら情報交換していく姿勢には、お互い強くなっていこうという気概を感じます。工夫している点はありますか。
大西氏:守秘義務は大事になってくるので、そこは個別対応になります。気をつけているのは、車輪の再発明はお互いする必要は全くないし、しなくて良い苦労はしないほうがいいと思うんです。我々としては、世の中で進んでいるものはいち早く取り入れたいし、失敗からは学びたいし、何かあればきっちり返していくギブ・アンド・テイクで信頼関係を築いていくことが大事だと思います。ビジネスライクな関係ではなく、人と人、組織と組織な関係が築かれていけば、必然的に学びが多く、強みを持ちやすくなると思います。
太古氏:競争領域に関しては喋れませんが、そこはお互いさまというラインがあると思います。それ以外のところで、お互いに進んでいるところは取り入れたほうが、AI/DXが進んでいくはずです。人と人のコミュニケーションは大切にしたほうが良いですし、2者間だけでなく、そこからさらに広がっていけば面白いなと思っています。
――大西さんは広報活動を活用しながら社内のいろいろな人も巻き込んでいったそうですが、現場はなかなかすぐに動かない部分もあると思います。
大西氏:弊社の場合、企業文化的にトップダウンが効かない、自主/自由/自立で現場が意思決定してリードしていく気風が強い会社です。そんななかで、現場で最初に集まってきたのが「データを活用して会社をもっと良くしたい」「デジタルで顧客に新しい価値を」という”火の玉”になれる人材だったのが良かったかなと思っています。
現場をよく知っている人間が集まっていて、社内のネットワークもそれなりにありました。例えば、全員が中途採用で「デジタルの知識はあるが関係性がない」というところから入ると大変ですが、スタートの時点で課題感も押さえどころも何となくわかっていて、「ここを押せば何か結果が出るんじゃないか」という部分を肌感覚で見つけて、ボトムアップで進めていけたのが最初の入口としてとして良かったかなと思っています。
――太古さんはダイハツ技術研究会でコアとなるような意思を持った人たちを集めて、その活動を通してトップに働きかけてきたわけですが、どうやってそういった人材の協力を得てきたのでしょうか。
太古氏:技術研究会に集まってくるのはすでにAIに興味がある人で、”火の玉”みたいな人が厳選されています。とは言え、そのメンバーがいきなりAIを使ってもうまくいかないので、まずは自分たちでできる範囲の小さなところから始めました。ある程度進めると事例が出てくるので、そのタイミングで全社に向けて事例共有会みたいなものを3カ月に1回くらい開催しています。
身内だけで小規模に始めましたが、徐々に人が集まってきて、第2回、第3回と少しずつ広がっていきました。そのうち、経営層に「こういう活動をやっているらしい」という声が届き、実際に参加してもらうことでトップの理解にもつながっていきました。