テクノロジーが急速に発展した21世紀。既存の業界/企業を凌駕するディスラプターが台頭し、従来のやり方のままでは生き残っていくことが厳しい時代となった。ディスラプターに立ち向かうため、企業はDXに取り組む必要があるが、日本においてはまだまだ不十分と言える。
こうした状況を受けてビジネス・ブレークスルー大学 学長 大前研一氏は、7月14日~16日にオンライン開催された「TECH+ EXPO 2021 Summer for データ活用」にて、「仕事をデジタル化するだけでなく、テクノロジーを用いて21世紀型企業に変革すべき。経営者はデジタルに馴染みを持ち、企業変革を自らリードしていかなければ、デジタルを理解している会社に凌駕されてしまう」と語った。
日本企業はこれからどこに向かうべきだろうか。大前氏は、DXの成功事例を紹介しつつ、DXを推進し21世紀型企業へ変革していくための心構えについて解説した。
オンラインを前提にゼロベースでビジネスを設計する
大前氏は、2000年に出版した『The Invisible Continent (邦訳:新・資本論)』(発行:HarperBusiness)のなかで「富はプラットフォームから生まれる」ということをすでに指摘していた。ただ、大前氏は「巨大プラットフォーマーに対してまともに対抗しようとするのではなく、それらを上手く活用することで国境や業態を超えて進化していくことができる。また、これまでに自社で蓄積してきたことを組み合わせてプラットフォーム上に公開し、他社に使ってもらうことがビジネスチャンスになりえる」と、必ずしもプラットフォーマーを目指すことだけがビジネスとして成功するための手段ではないと付け加える。いずれにしても、今振り返ってみるとデジタルこそが「Invisible Continent = 見えない大陸」の重要な領域だったというわけだ。
こうした時代においては、リアルで行なっていることにオンラインの要素を付け足すというアプローチではなく、オンラインを前提としたゼロベースでのビジネスの設計が必要だという。大前氏は「教育であれば、全てオンラインで完結できるような教育を実現しようとするとどうなるか、というところから考えなければならない」と教育を例に説明する。
実際に大前氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学は、100%オンラインで経営を学ぶことができる。「キャンパスのない大学で、オンラインに最適な授業を実施するというオンライン前提の価値を提案し続けてきた」と大前氏は振り返る。
一方、国の制度や仕組み自体もデジタル化が進んでいないのが日本の現状だ。大前氏はマイナンバーを例に挙げ「デジタル化していない戸籍や、古い仕組みが残った住民票を前提に考えているためうまくいかない。ゼロベースで考えると現在のマイナンバーとは全く違う仕組みになるだろう」と、オンラインでの利用やデジタルの活用を前提にビジネスや仕組みを考えていくことの重要性を訴える。