2020年2月、ローソンはレジなし実証実験店舗「ローソンGO」をオープンした。同店舗では、生体認証後、入店して商品をピックアップしそのまま退店するだけで自動で決済が行われ、スマートフォンにレシートが送信される仕組みになっている。

同実験店は、顧客に支持されたのだろうか。また、今後はどのような展開を考えているのだろう。5月27日に開催されたビジネスフォーラム事務局×TECH+フォーラム「DX Day 2021 May デジタルで経営を変革する」では、ローソン オープン・イノベーションセンター センター長 長澤拓弥氏が登壇。実証実験の結果を踏まえ、ローソンGOの狙いと戦略、同社におけるイノベーション創出に向けた考え方について説明した。

長澤拓弥氏

ローソン オープン・イノベーションセンター センター長 長澤拓弥氏

ローソンGOが提供する価値とは

ローソンGOの実証実験は、富士通新川崎テクノロジーセンター内に設置された従業員専用の店舗で行われた。この場所が選ばれた背景には、同センター内にある有人店舗が抱える課題を解決するという狙いがあった。

有人店舗は以前から、お昼時に昼食を購入する顧客で溢れかえってしまうことがしばしばあり、レジ待ちの行列を見て商品の購入を諦めている人々が少なからずいるものと考えられていた。こうした状況に対してローソンGOを導入することで、店員の数はそのままに売上向上が図れるのではという仮説の下、「レジ待ちのない購買体験」「省人化営業と機会ロスの削減」をローソンGO実験店の価値と捉え、実証実験が進められた。

実証実験

結果として、時間帯別の売上データからは、お昼時の混雑によりこれまで商品の購入を諦めてしまっていた顧客を呼び込めている様子が伺えたという。また、夕方の利用率が高いことも同店舗の特徴だ。長澤氏はこの結果について「夕方に小腹を満たすための軽食を購入したいが、なるべく会計は短時間で済ませたいというニーズがあることがわかってきた」と説明する。

省人化という点でも、ローソンGOのメリットは大きい。ローソンGOに求められる人手の作業は、大きく分けて、開店前の準備、昼前/夕方の商品補充、閉店作業のみで、1日あたりでは合計85分~110分程度の作業で済む。

こうした結果から、当初想定していた「レジ待ちのない購買体験」「省人化営業と機会ロスの削減」という価値の提供にはある程度成功しているものと考えられる。

システムはユーザーの声を反映させながら日々改善

システムの改善も日々進んでいる。ローソンGOのシステムは、生体認証を富士通、入店から退店までのシステムを米Zippin、決済/レシート配信は内製といったかたちで、3社の分担によって構築されている。

例えば、Zippinの仕組み上、オープン時にはSKU(Stock keeping Unit)200で小型の商品は扱えないという制約があったが、新しい什器を開発することで、品揃えの数や幅を増やす試みが進んでいる。また、店舗の営業時間やレシート通知のタイミング、商品の認識精度などもユーザーの声を基に改善されているという。

ローソンGOは事前登録が必要ということもあり、オフィスや駅ナカ、病院など繰り返し利用のニーズが高い土地との相性が良い。今後は、既存の有人店舗の近くに出店するパターンと、ローソンGO内にセルフレジを併設するパターンの2通りの方法で展開を進めていく考えだ。