マイナビニュースは11月27日、「マイナビニュースフォーラム2019 Autumn for 働き方改革」を開催した。
その特別講演には、ラック 常務執行役員 CTO SIS事業統括部長 兼 アジャイル開発センター長の倉持浩明氏が登壇。「学び方を変えて、働き方を変える~ラックはどのようにして社員が熱狂的に学ぶ『しかけ』を創ったか~」と題し、働き方改革の推進に併せて社員の「学び方」を改革した同社の事例を紹介した。
調査によって明確化された”惨状”
2017年から本格的に働き方改革への取り組みをスタートしたラックでは、その開始に際し、同社代表取締役社長を務める西本逸郎氏が「社員の満足度を上げていかないと事業継続につながらない」と全社員の前で宣言している。
まずは現状を可視化すべく、全社員を対象に働き方改革に関するWebアンケートを実施するとともに、サンプリングで200名の社員と対面ヒアリングを行った。それらの結果データに対し、AIを活用した感情分析と多用ワード分析を実施したところ、「結果は惨憺たるものだった」(倉持氏)という。その具体的な内容は、以下の通りだ。
- 働き方改革への意識は高いが、期待感と失望感が混在
- 推進体制および具体策について納得感がなく、不安
- 客先勤務社員の比率が高く、その承認欲求は強い
- 労働時間を縮小しようとする職場文化や上司の指導は限定的
- 人事制度(評価/待遇)、キャリア開発についても納得度が低い
このうち「客先勤務社員の比率が高い」というのはSI業界ならではの勤務形態でもあるが、こうした働き方をしていると徐々に組織への帰属意識が薄れていく傾向があるのだという。
これらの課題が明確となったラックでは、「人事労務プロジェクト」「人材育成/受注改革プロジェクト」「業務改革プロジェクト」の3つのプロジェクトを編成して働き方改革を推進していった。
具体的な施策を実施するにあたり、まずは「働き方改革 施策20項目」を設定し、進捗を公開するようにした。その施策の1つが、経営層による「客先勤務者 訪問ランチ」である。これは、会長と社長が毎月1回、各現場を訪問して社員とランチをしながら対話するというものだ。
「訪問ランチでは、経営層の思いを1人1人に直接伝えてもらっています。参加者からは、『リラックスした雰囲気の中で話をすることができ、会社との距離感が変わった気がする』とか『現場の話、会社の考えていること、双方の話ができて良かった』といった反応があります」(倉持氏)
また、「社内複業推奨制度」は、本来の担当業務に加えた活動を経験することで、視野を広げ、各人の価値を高めることを目的とした制度である。同制度においては、自分の能力を高めたり、経験を積んだりするチャンスを自らつかんでもらうべく、本来の担当業務では評価対象になっていない活動を奨励する。活動内容は月次でポイント集計し、年度末に人事考課とは別に賞与配分が行われる。
「普段とは違う経験をすることで、自らの新たな側面に気づく機会になればと始めた制度」だと倉持氏は説明する。
そして、働き方改革を考える期間として社員自らが企画/実践するのが働き方改革を考え、行動する「LAC(Learn And aCt)週間」だ。これは毎月1週間を「LAC週間」に設定し、テーマを決めて社員の行動を促すというもの。各部門が持ち回りで企画を考え、社内カフェテリアを利用したイベントを行っている。
「働き方改革の取り組みを始めても、(各社員は)なかなか自分自身のことだと捉えようとしません。また、時の経過とともに熱が冷めるものです。それを避けるための施策として取り組んでいます」(倉持氏)