米Dropboxが企業ユーザーの取り込みに注力している。2007年の創業時は、ファイルをクラウドに格納できる「パーソナル・オンラインストレージ」企業として認知度の向上を目指してきた。それが達成された現在は、「Design a more enlightened way of working(より賢明な働き方を設計すること)」をミッションに掲げ、チームのコラボレーションを円滑にし、個人の作業効率を向上させるツールであることを訴求している。
Dropboxユーザーの80%はビジネス利用だ。「ただし、ビジネス利用といっても部門ごとのグループ利用が大半」(同社幹部)であり、今後は企業単位でのユーザーを獲得できるよう訴求していく方針だという。
同社が9月25日(現地時間)にカリフォルニア州サンフランシスコで開催したユーザーカンファレンス「Work in Progress」では、企業ユーザー向けの機能拡充が多数紹介された。
中でも目立ったのは、セキュリティ機能の強化である。SaaS運用管理プラットフォームベンダーである米BetterCloudとの戦略的パートナーシップ締結に伴う機能(関連記事『Dropbox、ビジネス向けコラボ機能を強化 - 散らかったタスクを1つのワークスペースに集約』)のほか、アクセス権制御やセキュリティポリシー策定を支援するものとして、「エンタープライズ コンソール」「クイック アクション」「Legal Holds(訴訟ホールド)」の、4つの機能追加を発表した。
米Dropboxで最高技術責任者(CTO)を務めるクエンティン・クラーク(Quentin Clark)氏は、「Dropboxのセキュリティ対策は、(サービスとしての)Dropbox全体のインフラをセキュアに保つことはもちろんだが、ユーザーが『自分たちのデータを安全に運用できる』ことも(Dropboxのセキュリティ対策として)包含されている」と説明する。
エンタープライズ コンソールは、IT管理者が組織全体のDropbox環境を可視化し、一元的管理する機能である。同コンソールではインスタンスレベルでの設定管理が可能で、チーム/メンバーがDropbox内でどのようなアクションをしたかが確認できる。対象となるアクションには、Dropboxに保存されているクラウドコンテンツも包含される。
クイック アクションは、管理者がショートカットを利用し、リンクの削除やアイテムの復元など、特定のアクティビティに対する修正を簡単に実行できるというものだ。
また、一般に「訴訟ホールド」とは、企業が訴訟や司法調査などの可能性があると判断される段階で、関連する証拠/書類のすべてをそのままの保存するプロセスを指す。今回Dropboxに追加された訴訟ホールド(機能)は、米国/欧州の法律を遵守するものであり、企業が特定のファイルバージョンを最大10年間保持できるようになる。