企業が自ら情報を発信するために運営する、オウンドメディア。その先駆けとも言えるのが、サイボウズが運営する「サイボウズ式」だ。2012年5月、「新しい価値を生み出すチームのためのコラボレーションとITの情報サイト」をコンセプトにスタートした同サイトは、今では月間15万人の読者を誇り、現在も仕事や働き方を軸にした記事を世の中に届けている。
ここで1つの疑問が生まれる。”働き方”について世の中に問い掛け続けるサイボウズ式だが、その編集部の働き方とはどんなものなのだろうか。
11月7日、8日の2日間にわたり開催されたサイボウズの年次カンファレンス「Cyboze Days 2018」では、サイボウズ式編集部から編集長の藤村能光氏と編集部員の竹内義晴氏が登壇。それぞれの働き方について講演を行った。
チームビルディングの「4つのポイント」
サイボウズ式はサイボウズのオウンドメディアではあるものの、自社のサービスに関する情報が一切出てこない珍しいメディアである。いかにもなPRが続くと読者もうんざりしてしまうが、まったくPRしないというのもそれはそれで企業として大丈夫なのだろうか。
実はこのサイボウズ式の立ち位置こそが読者に受け入れられている理由だと藤村氏は話す。メディアとしての独自性を保ち、信頼性のある記事を作ることが、結果的にサイボウズにとってのブランディングにつながっているのだ。
現に、サイボウズ式の記事がきっかけで(サービスについての記事ではないにも関わらず)サイボウズのサービスを導入する企業が現れたり、新卒や中途採用で入社する人が事前にサイボウズ式を読むことでスムーズに価値観やビジョンを共有できたりと、さまざまなメリットが得られているという。
まさにオウンドメディアとしてお手本のような成功事例となったサイボウズ式。そのチームビルディングには4つのポイントがあるという。
それは、「楽しさ重視」「自立を促し、自由に仕事」「管理しない、KPIで縛らない」「働く時間と場所を制限しない」だ。
チームビルディングのポイントをこの4つに集約するまでには、多くの苦悩があったと藤村氏は語る。
「少人数であり、メディア経験も少なく、全員がほかの業務と兼務。そうした状況で価値を出すためには、100人100通りの働き方で成果を出す必要がありました」
必要なのは「風土」とそれを支える「ITツール」だと藤村氏は言う。
「自律した個人が楽しさ重視で成果を出し、時間や場所にとらわれないチームを作ろうとしました。そのためには働き方に関係なく編集部に参加でき、相談できる場作りのためのツールが必要でした」
風土を作る、と口で言うのは簡単だが、それを実践するのは並大抵のことではない。風土を醸成するために藤村氏が意識したのは、チームの「心理的安全性」である。
「心理的安全性というのは、Googleが発表した『チームの生産性を高めるための方法』です。心理的安全性を担保するには、『心遣い』『共感』『理解力』という3つの要素が必要になります」
サイボウズ式編集部では、この心理的安全性を意識して組織風土の醸成に取り組んだ結果、前述の4つのポイントを押さえたチームビルディングに成功した。現在は編集部員全員が多様な働き方を実践しており、それでいてしっかりと成果を上げることができているのだという。
では、実際に編集部員はどんな働き方をしているのだろうか。