NTTコミュニケーションズは10月4日、5日の2日間、ザ・プリンス パークタワー東京において年次カンファレンス「NTT Communications Forum 2018」を開催した。本稿では、同カンファレンスで多数行われた講演のなかから、NTTコミュニケーションズ ICTコンサルティング本部 第六グループ 主査の田中雅教氏が登壇した「映像コミュニケーションの新時代がやってきた ~AI/VR活用によるコミュニケーション改革~」の模様をレポートしよう。
映像コミュニケーションへの活用が期待される「3つの新技術」
田中氏はまず、映像コミュニケーションへの活用が期待されている新技術として、疑似体験が可能な「VR」、人間のさまざまな作業をサポートする「AI」、高い臨場感が得られる「ホログラム」の3つを挙げた。現在の映像コミュニケーションは、社内や協業先、顧客とのコミュニケーションに用いられている程度のものだ。しかし、ここに新たに3つの技術が加わることにより、従来の常識を超えたイノベーションが実現できるという。
「業界によってプロセスやゴールが違いますが、新技術の重要性はいずれも高いと言えます」(田中氏)
さらに、このイノベーション実現に必要なファクターとしては「現場主導の社員教育/訓練」「組織内外の壁を越えた協働「社員の試行錯誤」の3つがあるとした上で、新技術の具体的な活用方法について解説を繰り広げた。
VRで”匠”の高度な専門スキルを継承
新たな映像コミュニケーションの利用シーンとして最初に挙げられたのが、各種業務に精通した”匠”のスキル継承を実現する方法だ。現在、企業においては人材不足が大きな課題となっている。また、たとえ人材が確保できたとしても、匠のスキルは長年の勘や経験に頼る部分が多く、継承者の育成にはどうしても膨大な手間と時間がかかってしまう。
こうした課題を解決してくれるのが、360度カメラを使って”匠の目線”で撮影した映像を、VRで体験するという手法だ。従来から、匠による実務を撮影して映像マニュアル化する手法は存在したが、第三者目線の映像では伝えられる情報に限界があった。しかしVRを用いれば、まるで後継者自身が匠となったかのように、映像を通じて疑似体験ができるのである。VRなら手元までしっかりと確認できるほか、人間の記憶力を向上させる「メモリーパレス」の効果によって、記憶の定着率が10%アップする期待もあるという。実際に米国の大手スーパーマーケットチェーンでも、VRを用いた研修が行われているそうだ。
また、VRをプロトタイプ製作に活用する例も紹介された。従来型のプロトタイプ製作では、設計/デザインから会議を経て、プロトタイプ製作に移行し、テスト/レビューを行うという工程をたどるのが一般的だ。もちろん、テスト/レビューでの評価が悪ければ、また最初からやり直さなければいけない可能性もあり、莫大な時間とコストが必要になる。
しかし、CAD/設計のデータからCGを製作し、それをVR空間でバーチャルプロトタイプとして再現すれば、データの状態でそのままテスト/レビューへと移行することが可能となる。国や地域を問わず複数人でデータを共有し、トライ&エラーを繰り返すことで、レビューの迅速化にもつながるというわけだ。