SAS Institute Japanは5月18日、都内にて年次カンファレンス「SAS Forum Japan 2018」を開催した。ここでは、イオンフィナンシャルグループ エー・シー・エス債権管理回収 代表取締役社長 木村信之氏が登壇した講演「AI・機械学習技術を活用した新たな債権回収ソリューション構築へ向けて」の模様をレポートする。
サービサー業界での生き残りをかけたAI活用
エー・シー・エス債権管理回収は、国内大手の小売業グループであるイオンの総合金融事業を担うフィナンシャルグループの債権回収会社(サービサー)だ。サービサーとは、金融機関などから業務委託、または債権を買い取って回収を行う、法務大臣の許可を得た民間の専門企業である。
取扱債権は、金融持ち株会社イオンフィナンシャルサービスのグループである、イオン銀行、イオンクレジットサービス、イオン住宅ローンサービスなどを中心に、電気料金債権やガス料金債権など、グループ以外の集金代行業務も行っている。
木村氏はまず、サービサー業界の概略として、会社数がピーク時の102社から79社へ、取り扱い債権額もピーク時の34兆円から14兆円へと減少するなか、回収額も5兆円から2兆円と半分以下に落ち込んでいる現状を解説した。
「競争が激化するサービサー業界において、より多くのデータを収集・管理できる分析基盤を構築し、データの可視化やスコアリングモデルの高度化に取り組んでいます。また、AI・機械学習技術を活用したリアルタイムな意思決定を行うことで、回収行動の自動化や最適化を図っています」(木村氏)
同社が、AIや機械学習に取り組んだ背景には、サービサー市場の寡占化が進んでいることや、属人的・非革新的な業務が多いといった課題があった。また、金融業界は大きな変革期を迎えているにもかかわらず、Fintechの活用が遅れていることや、経験・勘に頼るアプローチに危機感を感じていた。そこで、新しい取り組みの基本方針に掲げたのが「AIやITを駆使したデータ主導型の新しい債権回収プロセス構築」だった。
「国内サービサー業界で初となるデータ主導型の新しい債権回収ソリューションを構築し、成長・拡大のスパイラルを確立していくことを目指しました」(同氏)
取り組みは3つの軸で進められた。1つ目は、「誰に」をテーマにした「ターゲット分析」だ。例えば、顧客損益管理システムによる債権分析や回収予測などが挙げられる。2つ目は、「いつ、どのように」をテーマにした「回収行動分析」である。具体的には、トランザクションデータ活用や音声データマイニングがここに当てはまる。3つ目は、「誰が」をテーマにした「オペレーター分析」で、オペレーターの多角的評価や個別教育を行うというものだ。
木村氏は、これら3つの取り組みを詳しく説明していった。