ブロックチェーンは金融業だけに関係するテクノロジーではない。4月25日~27日に開催された「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション・マネジメント & データセンター サミット 2018」において、ガートナー ジャパン バイス プレジデント 鈴木雅喜氏は「ブロックチェーンはどのような未来を生み出すのか」と題し、ブロックチェーンテクノロジーをテーマに、ビジネス活用における現状と将来の展望について語った。
ブロックチェーンの基本の「き」
デジタルビジネスでは新しいテクノロジーが変革の起爆剤になる。ブロックチェーンは信頼性の高い取引を低コストでダウンタイムなしに提供するテクノロジーであるが、「ビジネスで取り組む価値があるのか」という懐疑的な意見や誤解も多い。ブロックチェーンについての理解を促すため、鈴木氏は次のような解説を行った。
「ここにいる一人一人がメモ帳を持っていたとしましょう。鈴木さんは佐藤さんに100円を送ると自分のメモ帳に書きました。鈴木さんは佐藤さんに取引内容を送るとき、取引内容の電子署名に該当するハッシュ値を計算してから送ります。
取引が終わりました。次に佐藤さんが吉田さんに400円を送ろうとします。その際、佐藤さんのメモ帳には鈴木さんから100円を受け取った取引の記録(ハッシュ値)が残っています。
常に1つ前の取引記録がその人のメモ帳に残り、メモ帳同士は繋がっています。鈴木さんが行った取引データは佐藤さんが持っているので、後から書き換えをすることもできません。このメモ帳一つ一つがブロックに相当します。ブロックで取引がつながるので『ブロックチェーン』と呼ばれるのです」
ブロックチェーンは基本的には中央集権型ではなく、ノードがあるだけの分散型システムであるが、中間型の形態もあり、取引認証の仕組みや取引データの持ち方にも多様性があることに注意が必要だと鈴木氏は話す。
中央を介さずに高速に価値の交換が可能なブロックチェーンは、これまで仲介ビジネスで利益を上げてきた企業にとっては大きな脅威になる。その代表例が銀行の金融取引における手数料ビジネスだ。2、3年前から、日本ではメガバンク中心で機会創出のための探求が始まっているし、政府も法整備を急いでいる。金融以外は関係ないという考えは誤りである。
鈴木氏は、ビジネスでブロックチェーンを使おうという動きは銀行から、公共、保険、ECサイト・小売、製造、エネルギーと広がり始め、各業種のリーダー企業がブロックチェーンのユースケースを模索している段階にあることを紹介した。
ユースケースも、ライドシェアや民泊、トレーサビリティ、投票、文書登記、宅配ボックスにポイントカードの運営まで、現在は中央集権の仕組みを使っていたとしても、ブロックチェーンに変えたらどうなるか、検討が始まっているのだという。「”将来を変えるテクノロジー”として、ブロックチェーンはあらゆる取引に関わるビジネスに広がっている」と鈴木氏は説明する。