2月19日から20日に開催された「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス サミット 2018」の最後を締めくくったのは、「独自のカスタマー・エクスペリエンスを自ら推進せよ」と題した講演に登壇したガートナー ジャパン リサーチ ディレクター 川辺 謙介氏だ。講演では、イベントタイトルを昨年までの「カスタマー360」から「カスタマー・エクスペリエンス」に変えた狙いを含め、カンファレンス全体を振り返った。
活況を示すCXテクノロジーへの投資
川辺氏によれば、イベントの名前を変えたのは、体験がもたらす価値を顧客が追求する時代に入ったことを重視したためだという。ビジネスにおいて、顧客体験(CX:Customer Experience)は価格や品質に代わる差別化要素となり得る存在となった。では、どうすればCXで差別化できるのか。
顧客を取り巻く環境は、「ソーシャル」「ビジネス」「テクノロジー」の3つの側面で変化が進行している。「重要なのは、顧客そのものが変化したことを認識すること」(川辺氏)だ。企業は若い世代の顧客を理解し、その支持を獲得する準備に入らなければならない。
CX戦略を策定する際は、テクノロジー活用が”鍵”となる。ベンダー動向はどうなっているのか。
2016年の世界CRM市場は、売上シェアトップのセールスフォース・ドットコムを筆頭に、SAP、オラクル、アドビといった大手ベンダーは対前年度比で二桁成長を達成しているという。比較的小規模のベンダーも対前年比で好調であり、既にCRM市場は規模でERP市場を超えたそうだ。ガートナーでは、2020年までにCRMがアプリケーション領域で最大の市場になると予測している。
CRM市場の成長著しいなか、企業の投資意欲の傾向は例年と傾向は変わらない。
投資意欲の高い領域のなかでも突出しているのが「顧客分析」だ。確かに顧客分析は重要だ。川辺氏は、顧客分析に投資するのは「顧客を理解する」「最大の満足度を実現する」「カルチャーを発展させる」「ROIを達成する」という4つの目的があるからだと指摘。そして、顧客を理解するには、直接データ(サーベイなど)、間接データ(音声・テキストなど)、推測データ(ジャーニーデータ)の全てを網羅的に集め、顧客マスターデータベースとして活用することが求められると説明した。
顧客の多角的な分析が以前より容易になった反面、気をつけないといけないのが法規制動向である。法律を守ることに気を取られ、対応した後に安心して何もしないのは日本企業の良くないところだ。「誤解しないでほしいが、ルールを無視していいと言いたいのではありません」と川辺氏。顧客に満足してもらえるような「体験」を提供することに挑戦するために、顧客分析を行い、ビジネス価値とリスクのバランスを見極めてほしいと強調した。