Jリーグにおいて営業収益ダントツの浦和レッズはどのようなマーケティングを実践しているのか。

昨年12月に開催されたデジタルマーケティングの未来を考えるイベント「T-CONFERENCE」(トライベック・ストラテジーら主催)に、浦和レッドダイヤモンズの広報部アシスタントマネージャー星野 高明氏が登壇。「スポーツマーケティングのリアル デジタルを恐れない為の思考整理」と題する講演を行ったので、その模様をお伝えする。

浦和レッドダイヤモンズ 広報部 アシスタントマネージャー 星野 高明氏

営業収益ダントツ クラブのマーケティングとは

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2017を制し、アジアNo.1のフットボールクラブとなった浦和レッドダイヤモンズ(レッズ)。国内でも知名度は高く、収容人数6万3700人のホームスタジアム「埼玉スタジアム2002」は毎試合のレッズサポーターで埋め尽くされる。

米FOX Sportsは昨年、FCバルセロナやリヴァプールFCとともにレッズサポーターを「世界の熱狂的なサポーター5選(5 most hardcore football club fan)」に選出した。ACL決勝では、そんな浦和サポーターらが作ったコレオグラフィー(色付きボードで作る人文字)が世界的に大きな話題にもなった。

営業収益の高さもJリーグクラブの中でダントツだ。2016年度のJリーグの営業収益は66億6000万円で、2位の鹿島アントラーズの55億8200万円、3位のガンバ大阪の51億8200万円を振り切って今年もトップだった。

そんなレッズの広報部でスポンサーシップやマーケティング、選手肖像権管理などの業務を12年間にわたって担当しているのが星野氏だ。

「デジタルマーケティングに対しては黒船がやってきたように感じている方も多いと思います。また、スポーツと言うと、デジタルな世界とは縁遠そうなイメージもあります。そんななか『まずはスタートラインに立つ』ことが重要だと思っています」と星野氏は講演を切り出した。

ホーム開催は年間20試合、収益を高めるために

最初のテーマは、ファンとクラブチームの関係性についてだ。クラブチームにとってファンは単なる顧客ではない。

昨年のACLのチーム成績を振り返ると、アウェイ戦は1勝4敗2分であったのに対し、ホーム戦は7戦全勝だった。サポーターやファンの応援の大きさが成績に大きな影響を与えていることがわかる。

「ファンとクラブは互恵関係にあります。ファンは精神的に経済的にクラブをサポートします。それに対してクラブは試合に勝ち、ファンに楽しみを与えることで応えます」(星野氏)

Jリーグクラブの3大収入は、入場料収入、ユニフォームやグッズなどのマーチャンダイジング収入、スポンサー収入だ。

このうちファンからの直接的な収入は、入場料収入とマーチャンダイジング収入の2つだが、レッズはこの数字も他クラブを大きく凌いでいる。入場料収入は23億7500万円と平均の約4倍、マーチャンダイジング収入は7億7800万円で平均の約3倍だ。サポータの存在なくしてはレッズの経営は成り立たないのだ。