IDC Japanは6月23日、クライアント仮想化をテーマにしたカンファレンス「Japan Virtual Client Computing Vision 2017」を開催した。今年で5回目を迎える同イベントは、新興ベンダーを含むスポンサー9社による協賛の下、過去最高の341名の来場者を迎え、盛況を博していた。本稿では、IDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 渋谷寛氏による基調講演「ワークスタイル変革2.0における次世代VDIの衝撃」の内容をダイジェストでお届けする。

伸長するクライアント仮想化市場

昨今のクライアントソリューション市場は、ワークスタイル変革に基づく企業変革や人材の有効活用が大きなトピックスになっている。そして、その実現に向けた戦略的なIT基盤を担うソリューションとして期待を集めるのが、仮想デスクトップだ(本稿では、クライアント仮想化と仮想デスクトップは、ほぼ同義語として取り扱う)。

登壇した渋谷氏は、こうした市場の最新動向について、事例や次世代テクノロジーの紹介を交えながら、ユーザー企業が取り組むべき方向性をアドバイスしていった。

IDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 渋谷寛氏

渋谷氏がまず紹介したのが、国内におけるクライアント仮想化の動向だ。経済産業省と東京証券取引所が毎年選出する「攻めのIT経営銘柄」内での導入率を見ると、2015年に選定された18社のうち、15社がクライアント仮想化を導入していたという。

同じように、2016年では26社中16社、2017年では31社中22社が導入しており、重複を含めて3年間総計で45社中30社、3年連続で選定された企業に限ると9社中8社がクライアント仮想化の導入企業となった。

「経営にITをうまく使っている企業は、エンドポイント周辺にも仮想化技術を活用して戦略的にITを構築していると考えられます」(渋谷氏)

クライアント仮想化市場には、さまざまなベンダーが参入している。従来のシンクライアント型端末やオンプレミス(VDI)ベンダー、セキュリティ関連・認証系ベンダーをはじめ、オールフラッシュストレージベンダー、DaaSベンダー、GPU、次世代VDI、ハイパーコンバージド、モバイル仮想化などを提供するベンダーなど百花繚乱といった状況だ。

IDCの調査でも、2016年から2021年にかけて、シンクライアント専用端末の販売台数は1.4倍(CAGR: 8.8%)に、ソフトウェアライセンスは1.3倍(CAGR: 5.5%)に、ソリューションは1.5倍(CAGR: 9.0%)にと、それぞれ堅調に伸びていく見込みとなっている。

Japan Virtual Client Computing Vision 2017(2017年6月)「国内クライアント仮想化市場動向分析 ~ワークスタイル変革2.0における次世代VDIの衝撃~」

特にモバイル仮想化ソリューションは、2016年の160億円が2021年には730億円へと4.5倍(CAGR: 34.7%)に拡大、また、DaaS市場は2016年の460億円が2021年には1,420億円へと3.1倍(CAGR: 25%)に拡大する見込みだ。

Japan Virtual Client Computing Vision 2017(2017年6月)「国内クライアント仮想化市場動向分析 ~ワークスタイル変革2.0における次世代VDIの衝撃~」

「クライアント仮想化市場に対するユーザー動向調査では、導入目的として、セキュリティ、運用管理、システム可用性向上に加え、2017年には新たにワークスタイル変革とインターネット分離が登場したことが興味深いトピックです。導入企業の満足度調査でも、エンドユーザー、IT管理者、経営層の全てが非常に高い満足度を示していることも特徴的だと言えるでしょう」(渋谷氏)