企業において、その構成員である人材が重要であることは言うまでもない。だが従来、その育成や活用は属人性の高い方法で行われてきたため、一貫性に欠ける点は否めないのが実情だ。
一方、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、いわゆる「働き方改革」が政府の方針として打ち出されたことが後押しとなり、働き方やキャリア形成について改めて見直そうという動きが活発化している。ITの進化が、時間や場所を選ばない働き方を可能にしつつあることも、その一助となっていると言えるだろう。
こうした背景を踏まえ、各企業では、いかに従業員1人1人の可能性を引き出し、戦略的な人材活用を行えるか、すなわち「タレントマネジメント」の成否がビジネスに大きな影響を与えるものとして認識され始めているという。
これからの「働き方」はどのように変化していこうとしているのか。そうした流れのなかで、ITはどのようにタレントマネジメントをサポートしていくのか。――その黎明期から人材の学習と戦略的活用に着目し、タレントマネジメントソリューション「コーナーストーン」を提供する米Cornerstone OnDemandの社長兼CEO アダム・ミラー氏は、同社の年次カンファレンス「Cornerstone Convergence 17」において、日本メディアのグループインタビューに応じた。
米Cornerstone OnDemandの社長兼CEO アダム・ミラー氏 |
「働き方」が変わるとき、ITはそれをどう支えるか?
――働き方の多様性が叫ばれる昨今ですが、人々の働き方は今後、どのように変わっていくと思われますか。
ミラー氏:いくつかの大きなトレンドがあると思いますが、一言で言えば「フレキシビリティ」が重要になると言えます。(ITの進化によって)やろうと思えば、いつでもどこでも働けるようになりました。企業側は、「だから働かせよう」というのではなく、その自由さを生かして、子どもを迎えに行ったりとか、余暇を楽しんだりといったことができる選択肢を与えてしかるべきでしょう。
また、Uberのように、オンデマンドで仕事をするスタイルもあります。季節によって仕事量に差がある業種では、そういったオンデマンドの従業員を雇う企業が増えてくるでしょう。そうなれば、ますます閉じた環境で働いている場合ではありません。
テクノロジーの進化によって、5年後、10年後には、私たちの仕事は今とは違うかたちに変化しているはずです。全ての人が、そうした新しい仕事に適応できるようにトレーニングしないといけませんし、自分のポテンシャルを認識できるようなツールも必要です。つまり、グローバルの従業員を再トレーニングする必要があるということです。当社は、そこに大きなチャンスがあると思っています。
――世の中の変化に伴って、タレントマネジメントへの注目度も変わってきたのですね。
ミラー氏:当社の創業当時は、まだ世間に「タレントマネジメント」というコンセプトすらありませんでした。人々の関心は、人材の教育についてや、業績評価をどのように行うかといった部分に留まっていました。
そうした一連の事柄がタレントマネジメントというカテゴリーで語られるようになったのは、2005年ごろのことです。「採用から、学習、業績評価、後継者育成までを1つのつながりとして考えるべき」と認識していた人物として最初に挙がるのは、(米Bersin by Deloitteの創設者兼プリンシパルの)ジョシュ・バーシン氏でしょう。彼によって、タレントマネジメントは企業において必須のものだと提言されたのです。
――そうした流れのなかで、システム面ではどのような変化があったのでしょうか。
ミラー氏:当初は、採用や学習、業績評価など、それぞれのシステムがバラバラに構築されていました。2008年から2009年ごろに、ようやくシステムは一元化されるべきだと考えられ始めましたが、まだ「そうだったらいいな」「お金があったらやりたい」くらいの感覚だったと思います。
2012年から2013年くらいになって、本格的にシステムを統合したほうがよいと思われ始めました。「(そういうシステムが)あったらいいな」から、「なくてはならない」に変わったわけです。
こうした変化が起きるタイミングは、地域によってそれぞれ異なります。恐らく、今最も進んでいるのはヨーロッパでしょう。ヨーロッパが最初にタレントマネジメントシステムを統合し、米国もそれに続きました。アジア諸国はまだシステムがバラバラで使われている状況だと思います。とは言え、いずれはアジア諸国も一元化したソリューションでタレントマネジメントに取り組んでいくと見ています。