今やヘルスケア業界でもIoTの活用が広がっており、「IoMT(Internet of Medical Things)」という言葉も生まれている。4月19日~21日に開催された「ヘルスケアIT 2017」では、「みんなで考える、病院のIoT」と題したセッションが実施され、臨床医・医学生・IT業界という異なる立場で医療に関わる3人の登壇者が、「病院のIoT」をテーマに持論を展開した。

患者、医師、看護師の間に横たわるディスコミュニケーション

最初に登壇したのは、ITの目線から医療にかかわるメディカルローグ 代表取締役、野口宏人氏だ。氏は、現在の医療現場には、患者の理解不足や待ち時間の長さなどさまざまな課題があると語り、その根本要因の1つとして、患者と医師、看護師などとの間に根付いている、ディスコミュニケーションによる不満や意識差を挙げた。

まず、患者から医師に対しては「せっかく1時間も待ったのだから、もっとちゃんとした診療をしてほしい」という声が目立つ。しかし、医師にしてみれば、常に忙しいため1人1人の患者にそこまでの時間を費やしにくい。

「医師だけではなく、コメディカル(医師以外の医療従事者)を活用すれば解決につながるかもしれません。そのためには、患者の意識も少し変える必要があるでしょう。実際、患者からは『医師としか話していない』という声が目立ちました。ここは、ITの活用が効果的な分野ではないかと見ています」(野口氏)

メディカルローグ 代表取締役 野口宏人氏

また、医師は患者に対して、「病気のリスクについて十分に説明したので、きちんと認識してもらっているはずだ」と思いがちだ。しかし、実際に医師が期待するほどの理解をしている患者の割合はそう多くはない、というのが現実である。野口氏は、このディスコミュニケーションについても、ITによる解決の可能性があるとした。

そのほかにも、医師と看護師の間のディスコミュニケーション、そして医療現場のバックヤードにおける業務過多などの課題について言及した野口氏は、これらの課題の解決に向けたIT活用のアプローチとして、メディカルローグが提供する共通問診票アプリ「pre put(プレプット)」を紹介した。同アプリでは問診票の内容を簡単に入力できるため、受付効率化による待ち時間の削減が可能となるという。また、データの蓄積・分析によりさらなる課題解決にもつながる。

「患者は皆、体調が悪くて病院に来ているので、待たされるのは辛いものです。このpre putは、そうした問題の解消に役立つでしょう。患者が来院したら、すぐに診療できるような未来につなげていきたいと思います」(野口氏)