ドローンのポテンシャル - メーカーやキャリア、ユーザー企業はこう見る
「ドローンを活用しよう」という話題が聞かれる昨今、波に乗り遅れまいと、さまざまな企業が活用を目指して実証実験を行っています。しかし、「波に乗る」ことが目的になっていないでしょうか?
法規制や現在のドローンのスペック、将来的な可能性、自社事業へのインパクトなど、本当にその事業にドローンが必要なのか、精査できているのでしょうか?
実際にドローンをサービス内で活用しているセコムとコマツ、LTEを活用したセルラードローンの実現を目指す携帯キャリア3社、実際にドローンを提供するDJIとACSL、業界団体のJUIDA、担当官庁の一つである国土交通省に、石川 温氏と中山 智氏が話を伺いました。工事現場で建機などを用いて大規模に整地する場合、業界外の人間からすれば「多くの作業員を投入して作業する」というイメージがあるが今は昔、ここにもIT技術を活用した進化が進みつつある。その一翼を担うのが建設機械の開発や、子会社でレンタル事業も手がけるコマツだ。同社は最新のIT技術を積極的に取り入れた建設業者向け支援サービス「スマートコンストラクション」を提供している。
このスマートコンストラクションについて、コマツ スマートコンストラクション推進本部 副本部長 兼 建機マーケティング本部 国内販売本部 副部長の小野寺 昭則氏に話を伺った。
2000現場で稼働実績、スマートコンストラクションの凄み
スマートコンストラクションでポイントとなるが「ドローン」の導入だ。建機を使って整地をする場合、はじめに行う作業が「現場の測量」。面積を測るだけと思いがちだが、そこにどれくらいの量の土砂があって、それを削った場合、何台分のトラックで運び出さなければならないかといった予測を立体的に計測して割り出す必要があるのだ。
この立体的な測量作業を「スマートコンストラクション」で担うのが「ドローン」だ。測量したい範囲をあらかじめ設定して、その上空をドローンが飛行して搭載しているカメラで撮影する。あとはそのデータを解析し、3Dデータを作成する。今までは測量士が何日もかけて行っていた作業が、早ければ1日で完了するという。スマートコンストラクション全体では、2000現場をすでにこなしているが、ドローンを活用した現場もすでに700現場、現在36機で運用している。
作り上げた3Dデータは、施工範囲や工程などの作成に利用される。工期が何日間で、何台のトラックが必要かも、システム上ですぐにはじき出される。またコマツは、簡単な操作だけで運転できるブルドーザーと油圧ショベルも開発しており、スマートコンストラクションで活用されている。ドローンが計測したデータを元に作成した工程にあわせて、ブルドーザーが半自動的に整地などを行っていくシステムのお陰で、工期は30%も削減できるという。
「日本でいちばん(ドローンを)飛ばしている」と語る小野寺氏だが、ドローンはあくまでスマートコンストラクションの一部に過ぎない。一番のメリットは、作業人員を大幅に減らせることにある。測量や建機の自動化は、補助作業員の減少に繋がる。建機の運転についても「これまで5年から10年は修得にかかった運転のワザが3日で使えるようになる」(小野寺氏)とのこと。
ただ小野寺氏は、単なる「人減らし」とは捉えてほしくないと話す。「高い技術をもった作業員は、さらに価値の高い仕事に取り組める」(小野寺氏)ことに加え、建設業で深刻な人員不足の対策にも繋がる。例えば現在国内で土木作業員として従事している人口のうち、110万人が55歳以上。2025年には政府統計で130万人の需給ギャップが生まれる見込みだ。
小野寺氏は「(政府が推進する建設業のIT化である)アイコンストラクションは戦後始まって以来の革命。現場では人手不足が肌感覚で受け止められている」と語り、人員のリストラにもなりかねないスマートコンストラクションのようなソリューションも、現場作業を行う企業では積極的に受け入れられているという。
社内のパイロット免許制度で安全確保
逆に、スマートコンストラクションを導入することで、新たな雇用が創出されている面もある。例えば同社ではドローンを飛行させるために、社内でオリジナルのパイロット制度を導入している。「マニュアルはかなり厳しい内容にしてあるので、自動車の運転免許よりも難しい」(小野寺氏)とのことだが、現在では約30人がパイロット社内資格を取得しており、そのうち6人は女性だという。