ドローンのポテンシャル - メーカーやキャリア、ユーザー企業はこう見る
「ドローンを活用しよう」という話題が聞かれる昨今、波に乗り遅れまいと、さまざまな企業が活用を目指して実証実験を行っています。しかし、「波に乗る」ことが目的になっていないでしょうか?
法規制や現在のドローンのスペック、将来的な可能性、自社事業へのインパクトなど、本当にその事業にドローンが必要なのか、精査できているのでしょうか?
実際にドローンをサービス内で活用しているセコムとコマツ、LTEを活用したセルラードローンの実現を目指す携帯キャリア3社、実際にドローンを提供するDJIとACSL、業界団体のJUIDA、担当官庁の一つである国土交通省に、石川 温氏と中山 智氏が話を伺いました。世界のドローン市場において、存在感を増しているのがDJIだ。毎年、年始にアメリカ・ラスベガスで開催されるIT関連展示会「CES」でも、大きなブースを出して製品をアピールしている。日本では2013年8月に現地法人を立ち上げて4年近くが経つが、DJIにとって、今ではグローバルの中でも日本拠点の重要度が増しているという。
日本法人代表の呉 韜(ごとう)氏は「設立当初はアフターサービスやマーケティングが中心であったが、今では開発拠点としての役割が大きい。グローバルにおいて日本が重要な役割を担っている」と語る。
DJIが日本を重視する背景にあるのは、精密加工やソフトウェアの組み込み、レンズやカメラのシステム、画像処理技術といった幅広い分野で高い技術力を誇っているためだ。ドローンには、カメラを搭載するだけでなく、ソフトウェア処理が果たす役割は大きい。そのため、日本に開発拠点を設けることで、そうした技術をドローン開発に生かしているというわけだ。
「DJIでは『Made in Grobal』という言い方をしている。世界中の拠点でドローンを開発しているのが我々の強みと言える」(呉氏)
アメリカでソフトウェアの設計を行い、日本ではソフトウェアに加えてカメラなどの精密加工技術を開発。そうした技術を中国で組み込み、製造していくというプロセスだ。
「適材適所で地域の強みを生かしている。製造拠点がある深センは、元々はスマホの世界的な工場がある場所だ。そのため、各種センサーなどのドローンに使う部材が安く手に入る。日本には本当に優秀な技術者が多く、アメリカ、中国のメンバーと仕事をしている」(呉氏)
日本で開発されたものとしては、1月にリリースされた「グランドステーション」というソフトウェアがある。iPadやパソコンでドローンの飛行ルートや時間を設定できるアプリで、直感的な操作性によってドローンの飛行設定を簡単に行えるのが魅力だ。
「こういったソフトウェアは日本で開発している。日本で開発しているのは、日本におけるドローンの需要がソリューションに近いというところが大きい。法人のニーズに的確に対応するため、現場に近いところで開発するのが望ましいからだ」(呉)
昨今のDJIはドローンの新たな需要を掘り起こすために次々と、新しい製品を投入しているように見える。呉氏は「今はマーケティングよりも先行技術に投資している。我々はイノベーションを起こすベンチャー企業といえる」と語る。
日本は「ドローンソリューション」が普及の中心に
DJIにとって、日本は重要な開発拠点だが、一方で「市場」としてはどう見えているのか。呉氏は日本は世界とはやや異なっているという見方をする。