ソラコムは2月7日、同社サービスがLPWA(Low Power Wide Area)規格の一つである「LoRaWAN」に対応すると発表した。同社は2016年7月より実証実験(PoC)キットを提供してきたが、今回の発表により本格展開を開始する。

LPWAはLTE技術をベースにした通信規格群の総称で、名称の通り低消費電力(Low Power)で広い通信エリア(Wide Area)を特徴とする。LPWAには、携帯通信事業者が免許を付与されている帯域(ライセンスバンド)を利用した「LTE Cat-1」や「LTE Cat-M1」「NB-IoT」と、誰でも利用できる免許を必要としない周波数帯(日本では920MHz帯)を利用するアンライセンスバンドの「LoRaWAN」と「Sigfox」がある。Sigfoxについては、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が日本における展開を予定している(1国1事業者制度を採用)。

LPWAは主にビーコンなどの大容量通信を必要としない用途に特化しており、なおかつBluetoothやZigBee、Wi-Fiなどに比べて広範囲(半径数km)のエリアカバーを持つ。なおアンライセンスバンドについては、ネットワークに接続するゲートウェイと組み合わせて活用する必要があり、それに加えてネットワーク・サーバーも用意しなければならない。そのためソラコムはハードウェアとサーバー機能を組み合わせて提供することで、LoRaWANの普及・拡大を後押しする意向だ。

ソラコムは「SORACOM Air for LoRaWAN」を提供し、ソラコムプラットフォームのユーザーコンソール上で動作検証済みの屋内用ゲートウェイ「AL-020(WAN側は3G)」と、Arduinoで開発できるLoRa Arduino開発シールド「AL-050(ともにエイビット製)」を販売する。今後はほかのメーカー、パートナーとも協業を広げ、デバイスやゲートウェイを拡充していくとしている。

屋内用ゲートウェイ「AL-020」

LoRa Arduino開発シールド「AL-050」

デバイスが収集したデータは、ゲートウェイを通してソラコムプラットフォームに送られる。ゲートウェイ配下にあるデバイスはユーザーコンソールで管理可能となるほか、収集したデータは「SORACOM Harvest」によってSORACOMプラットフォーム上でまとめて管理できる。もちろん、自社サーバーやクラウドに「SORACOM Beam」や「SORACOM Funnel」を利用してデータを転送することも可能だ。

料金は「所有モデル」と「共有サービスモデル」の2種類が用意される。料金プランとして不思議なネーミングだが、これはゲートウェイを購入するか否かに依存するため。所有モデルは純粋な「プライベートネットワーク」として利用できる一方、共有サービスモデルは「ソラコム所有のゲートウェイを貸与する」という利用スキームになる。

携帯基地局をイメージするとわかりやすいが、ソラコムが自身でLoRaWANネットワークを構築するのではなく、共有サービスモデルを選択したユーザーが貸与されたゲートウェイを設置することで、それぞれ勝手に通信網を整備するというもの。その通信エリア内であれば、誰もが対応デバイスのデータ送信を活用できる仕組みだ。一方で所有モデルは、工場や自治体など他者にインフラのシェアが難しい事業者などがメインターゲットとなる。

共有サービスモデルは、その特性から低価格での提供を予定している。所有モデルは初期費用が6万9800円、月額費用が3万9800円(ゲートウェイ通信料込み、ゲートウェイ2台目以降は2万9800円)であるのに対し、共有サービスモデルは初期費用が2万4800円、月額費用は9980円に抑えている。なお、いずれもデータ連携サービス「Beam / Funnel / Harvest」の利用料金が一定回数分含まれている。

データ送信の各サービスで一定回数を超えると従量課金となるが、単価は1リクエスト0.0018円(Beamの場合)、Harvestでも1日5円と格安で、総コストは大きく上がらない(左が所有モデル、右が共有サービスモデル例)

玉川氏「無線資源の共有で新たな技術革新を」

記者説明会でソラコム 代表取締役社長の玉川 憲氏は「無線資源は公共のもの」という前提から、今回の「共有サービスモデル」の提案に至ったと語る。玉川氏は「Avoid MUDA(無駄)」を掲げており、持続可能な環境を目指して有限な無線資源を有効活用すべく、共有サービスモデルを用意した。