ソフトバンクグループは1月25日、全国282校の公立小中学校に人型ロボット「Pepper」約2000台を無償貸与すると発表した。2016年11月に公開された「Pepper 社会貢献プログラム」によるもので、支援総額は50億円にのぼる。
立命館と包括連携協定を締結
社会貢献プログラムでは、小中学校におけるプログラミング教育を目的とする「スクールチャレンジ」と、非営利団体による社会貢献を目的とした「ソーシャルチャレンジ」の2つのプログラムが用意されていた。なお、ソーシャルチャレンジの参加団体については別途発表が行われる予定だという。
今回のスクールチャレンジにあたっては、2016年6月にPepperを用いて公開授業を開催した立命館と、教育分野における包括連携協定を締結。この授業の成果を受けて開発したカリキュラムを、スクールチャレンジ参加校に提供する。なお、両者の連携協定は「教育分野でのICT活用促進と環境整備」と「ICTに関わる知識、技能などの育成」「知的、人的交流」の3点に渡り、Pepper以外でも取り組みを進めていく。
昨年行われた公開授業の成果を踏まえてカリキュラムを作成した立命館 |
立命館の担当者によれば、PepperのSDK「コレグラフ」は小学校3年生レベルには「ちょっとだけ難しい」。ただ、教員が補助教材などを用いてサポートすれば、十分対応できるレベルだという |
実際の授業では、Pepperのプログラミングで実際に利用されているGUIベースのSDK「Choregraphe(コレグラフ)」を利用する。GUIベースのため、通常のPepperアプリ開発でもプログラミング未経験者が開発するケースがある。また、子役として有名な谷花音さんが記者説明会に登場し、コレグラフを実際に利用してデモンストレーションした。
ソフトバンク社員のサポートを受けながらも、Pepperに「お辞儀」や「挨拶の発声」といった簡単なプログラミングを行った谷さんは「手を挙げる動作を選択しただけで、そのまま挙げてくれるのか不安だったけど、ちゃんと動いてくれたので嬉しかったです」とにこやかな笑顔を浮かべながら話していた。
優秀アプリ開発チームにはシリコンバレーへの旅行招待も
プログラムに参加する自治体は17で、北海道西天北5町連合のみ天塩町と遠別町、中川町、幌延町、豊富町で構成される。6~7名に1台の割合でPepperが割り当てられ、あわせてプログラミング用PCとモバイルルーターも貸与する。
貸与期間は2017年4月~の3年で、2020年よりスタートするとされるプログラミング教育必修化を前に、およそ9万1000名がロボットプログラミングを学ぶことになる。なお、Pepperアプリ開発の成果発表会を毎年自治体ごとに開催予定で、選出チームはソフトバンクが毎年2月に主催する全国大会へと駒を進める。
この全国大会の最優秀チームには、米シリコンバレーへの招待旅行を用意。これについて、ソフトバンクグループ 代表取締役副社長の宮内謙氏は「AIからロボット、IoT、ビッグデータと、ありとあらゆる技術について若者が議論し、(議論のもとに)新たなベンチャーが生まれている。教育では夢と志を育むことが大切だが、この旅行を通して『これをやってみたい』という志を抱いてほしい。その志こそ、発明や起業に繋がると思うし、そのお手伝いができればと考えている」と語っていた。
なお、参加自治体/導入小中学校数は以下の通り。
自治体 | Pepperを導入する小中学校数 |
---|---|
北海道西天北5町連合 | 13校 |
福島県南相馬市 | 18校(市内全校) |
栃木県下野市 | 8校 |
東京都港区 | 16校 |
東京都狛江市 | 8校 |
東京都町田市 | 21校 |
岐阜県岐阜市 | 39校 |
静岡県掛川市 | 11校 |
静岡県藤枝市 | 27校(市内全校) |
愛知県一宮市 | 27校 |
滋賀県草津市 | 15校 |
大阪府池田市 | 15校(市内全校) |
兵庫県神河町 | 5校(町内全校) |
和歌山県かつらぎ町 | 7校(町内全校) |
岡山県新見市 | 22校(市内全校) |
福岡県飯塚市 | 14校 |
佐賀県武雄市 | 16校(市内全校) |
立命館 理事長が語る「Pepperが教育に与える影響」
ソフトバンクの取り組みは、社会貢献活動の一環とともにプログラミング教育に先鞭をつけ、Pepper、ロボットの定着を意識したものといえる。
実際、ソフトバンクグループ CSR グループマネージャーの池田 昌人氏は必修化されるプログラミング教育を意識したものかと問われ「プログラミングと言っても、タブレットからロボットまでさまざまなものがある中で、どのプログラミングが最適か、役に立つかわからない。必修化される前に、自治体と先行して効果検証したい狙いもある」と話す。