就職面接において、笑顔はどの程度見せるべきなのか。目線はどこに置き、ジェスチャーはどれくらい交えるべきなのか――。
まことしやかにささやかれている定説の流用ではなく、ICTを活用した実測値で結論を導き出し、就活生へのアドバイスに活かすシステムを構築しようという取り組みが、関西大学とNTT西日本により進められている。
本稿ではその概要を紹介していこう。
プレゼンテーション力向上のためにデータ収集
共同研究は、関西大学による就職活動サポートの一環として進められている。面接における自己プレゼンテーション力を向上させることが目的だ。
具体的には、面接時の学生の挙動をセンサーデータとビデオ映像によりデータ化。そこに面接官が受けた印象や学生へのヒアリング結果を重ね合わせて、学生の面接時の状態を可視化している。
研究を主導するのは、関西大学 システム理工学部の小尻 智子 准教授。認知科学や心理学、教育学などをベースとした「人の活動」のモデリングを研究テーマに据えており、モデリング結果に基づいて、学習や創造活動が上達するソフトウェアの開発を進めている。最近では特に、プレゼンテーションのスキルアップを前提に、論理的思考やコミュニケーションスキルを支援する研究に取り組んでいる。
一方のNTT西日本は、バイタルデータを収集/解析して可視化する取り組みを行っており、同分野のシステム構築ノウハウを持つことから今回の研究に協力した。
面接挙動の定量化から得た、4つの分析結果
予備実験ではまず、4日間で17人(男性12名、女性5名)を面接。最初の3日間は面接官1人、最終日は面接官2人体制で実施した。
面接終了後、面接官/被面接者の双方が質問ごとに良し悪しを回答。回答結果と収集データを照らし合わせ、挙動(笑顔や目線、ジェスチャー)と印象の相関関係を分析した。
収集データには、脈拍数、手の動き(ジェスチャー)、笑顔の回数、面接官を見た回数、間投詞を使った回数がある。被面接者の腕に装着したリストバンド型デバイスで脈拍数と手の動きを計測し、面接の様子を撮影した映像から笑顔の回数や面接官を見た回数を目視でカウントしている。また、間投詞の数も、音声データを聞きながら確認したという。
データ分析で苦労したのは、同じ面接官でも、面接態度の良し悪しの評価が一定ではなく、「状況」によって変わること。「状況によって差が出ることはわかっていましたが、その状況をどう定義すればよいのかが見つけられませんでした」(関西大学 担当者)という。
面接官の評価と応答態度だけの相関を分析しても整合性がとれなかったことから、さまざまな状況にデータを分類して検討。最終的には、「被面接者が想定している/していない」で分けたうえで、応答態度を分析すると傾向が見えるようになった。
分析結果は以下のとおり。
面接分析結果
- 間投詞(言葉のひげ) : 面接環境によらず、少ない方が面接官からの評価が良くなる傾向がある
- ジェスチャー : 自己の想定内の質問の際に、ジェスチャーが多いと高評価となる傾向がある
- 笑顔 : 自己の想定内の質問の際に、少ないと高評価となる傾向がある
- 目線 : 自己の想定内の質問の際に、面接官の方向を向いていると高評価となる傾向がある