1月18日、日本マイクロソフトは代表取締役社長の平野拓也氏による新年の記者向けラウンドテーブルを開催した。同社の会見年度は毎年7月より始まるため、新年は下半期のスタートでもある。2017年度上半期のマイクロソフトはどういう手応えを得たのか、平野氏が語った。
2017年はAI元年に
マイクロソフトが数年来注力しているキーワードと言えば「デジタルトランスフォーメーション」だ。平野氏は「お客さまの支援を重要視しているが、特にこの半期は変革スピードが上がった」とその成果に胸を張る。それは、マイクロソフト製品を提供するだけでなく、ビジネスのスピード感が加速し、技術の進化も含めたトータルの成果が目に見えて伸びているという感触のようだ。
「AIがキーワードとなっていく中で、『インテリジェンス』をどのようにして貯めるかが重要になっていく。そこで米本社は、5000名規模のAI関連部署を設立し、グローバルオペレーションや製品、戦略、サポートのすべてを統合的に進めていく」(平野氏)
AIはバズワード化しており実態が見えないとの指摘もあるが、そうした声に対して平野氏は「2017年はAIの元年、イノベーションを起こしてドライブするためにも大切な年になると思っている」と、バズワード化させない意向を示す。それは、マイクロソフトにとって「AI」が25年前から継続して開発してきた”普通の技術”であり、飛び道具ではない身近なものだからだ。
実際に海外の調査機関によるAI関連特許数の集計で、米Microsoftが米Googleの2倍に近い1100件の特許を取得していることを引き合いに「技術や経験があるし、AI人材、エンジニアを束ねてAIにフォーカスする編成を行った。これだけの規模でまとめれば、そこからのアウトプットが楽しみだし、お客さまに対しても色々メッセージを出していけると思う」と平野氏は話す。加えて重要視するのが「価格」。
「音声認識から自然言語処理、検索など、さまざまなアプリケーションへの応用が考えるはず。それに加えて、インタフェースの変革として(チャット)ボットもAI活用の一端を担うはずだ。ただ、こうした話をするとお客さまから『高いのでは?』と聞かれる。その時は、マイクロソフトの歴史を振り返ってほしい(笑)。高いパソコンを半価にして出せるようにしたように、決して手が届かない製品ではなく、『誰もが使えるAI』にできると考えている。すでに金融機関から大学、ロボティクス、ラーメン屋、居酒屋まで、幅広い領域で試験導入が進んでいる。ハイクオリティのAIを安価に、どんどん利用しやすい形にしていくのが”違い”になると考えている」(平野氏)
働き方改革が大きく伸長した2016年
もちろんマイクロソフトの強みはそれだけでなく、「働き方改革」というソフト面の革新にも注力している。日本では諸外国に比べて生産性向上への取り組みが遅れていたが、ここ数年夏場に行っている「働き方改革週間」で昨年は800社以上が趣旨に賛同してテレワークによる業務を推進するなど、徐々にだが「仕事量ではなく仕事の質」へのフォーカスにシフトしつつある手応えがあると平野氏は語る。
「マイクロソフトとしては5、6年に渡って働き方改革の取り組みを行ってきたが、安倍首相の発言や問題が顕在化した企業の事件などもあり、『人事課題』から『経営課題』へと流れが明確に変わりつつあると感じている。社内でも2016年5月に就業規則を変更して、テレワークの更なる推奨を行っているが、同時にお客さんにもフレキシブルに働きやすい在り方の提案を行っていきたい」(平野氏)
テレワークやコミュニケーション、コラボレーションツールなど、コミュニケーションを軸とした働き方改革の提案を行う予定で、こちらにも「AI」の波が来ていると平野氏。AIはデータの蓄積とその行動パターンから見出した次の行動予測とともに最適なサジェストを行う製品・サービスが有望視されており、「Delveでは、ユーザーが欲している情報を、Office製品の利用傾向・特徴を掴んで指摘するようになる。2月には詳細を発表したい」と語っており、正式発表が待ち遠しい話になりそうだ。