制度の概要を理解したところで、続いて介護保険で行える代表的な工事とその注意点をみていきましょう。
介護保険で改修できる工事とそれぞれの注意点
以前にも取り上げましたが、介護保険を使ってできるリフォームの主なものは、下記の(1)から(6)のような工事となります。これらの代表的な工事を行う前に知っておかなければならないことを少し詳しく解説してみましょう。
(1)手すりの取り付け
手すりの取り付けの注意点は前述のとおりですが、手すりの端は袖を引っかけがちで、転倒の原因になるリスクも秘めています。端部を壁の方に曲げるパーツを取り付けると安全です。
(2)段差の解消
日本家屋は「和室は板の間よりも畳の厚さぶん高い」のが普通でした。スリッパを段差の所で脱いで、畳の部屋に入るパターンでした。しかし、このわずか6cm程度の段差がつまずきの原因になることもあり、和室と板の間が同一レベルにバリアフリー化されるようになりました。
建築士としては日本家屋のセオリーに外れて抵抗もあったのですが、実際にバリアフリーにしてみると、高齢者でなくても移動にストレスがなくなることがわかりました。もちろん、頭の比率が大きく不安定な幼児にも安全です。
(3)滑りの防止および移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
滑りにくい床材と言えばカーペットなどが代表例ですが、衛生面では少し問題があります。掃除が次第に行き届かなくなる点も考慮しないといけません。車いすやキャスターを押して移動する場合も、フローリングの方が適しています。滑りにくい加工したものを使用するか、床暖房などを併用して素足でも移動できる工夫をするなど、身体的な衰えに合わせた素材を選びましょう。
(4)引き戸などへの扉の取り替え
昔の日本の家屋の扉はほとんど引き戸でしたが、現在の住まいはほとんどドアなのではないでしょうか。引き戸にする理由は、車イスでの利用を念頭に置いているからです。
車イスなどで移動するときは、ドアを押すことはできるかもしれませんが、ドアを引くためには、ドアが開く分車いすを後退させなければなりません、そうなるとドアノブに手が届きません。また、引き戸の場合は扉の際まで手すりを取り付けられますが、ドアの場合は回転する範囲は取り付けにくくなります。
(5)洋式便器などへの便器の取り替え
できれば、トイレは高齢者の寝室近くに増設するとともに、介護できるスペースも確保できるように広めに設計しましょう。
(6)その他、それらの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
実は、この部分こそ工夫しなければならない要素が満載なのです。個々の住まいによって異なりますので、建材メーカーや設備メーカーなどのショールームへ出かけてみるとよいでしょう。いろいろな情報が得られると思います。