――編成はアナウンサーの経験が活きる仕事でもあるんですか?
最初に編成の話が来たとき、私は常にラジオを聴いている方と1番近い距離で接してきたがゆえに、判断できること、やれることがきっとあるんだろうと感じたんです。その判断軸を期待されての起用なんだろうなと思いましたんで、そこは大事にしていきたいですね。『ゴールデンラジオ』には週1回出させていただいているんですけど、先日もリスナーさんから「去年の暮れに夫がコロナの影響で職を失いました。どうしようどうしようと思っていたら、私も職を失ってしまいました」というメールをいただいたんです。
そういうダイレクトな意見がたくさん届くのって、現場にいないとなかなか肌感覚としてわからないんです。アナウンサーだけじゃなく、ひょっとしたらディレクターさんやライターさんもそうなのかもしれませんが、現場にいてこそわかることを、ラジオを聴いている方に向けて発信していくのが役割なのかなと今はようやく思えてきました。
――編成を兼任するようになったがゆえに、アナウンサーである喜びを余計に感じる場面もあるのでは?
アナウンサーであることはすごく自分にとって大事なことだなと実感しています。それから、多くの人たちのサポートがあって前に出ているという責任を負っているんだと改めてわかったので、いい意味でのプレッシャーはまたあらためて感じるようになってきました。
――編成になると、今までは触れずにいた文化放送の番組を聴くような機会も増えてくるんでしょうか?
24時間365日ずっと放送してますので、全部の番組を丁寧に聴くことはできませんけども、できるだけ聴くようにしています。あとは、他局の番組も聴くようにしなければいけないですし、ありとあらゆることにアンテナを向けなきゃなとあらためて心がけていますね。
■文化放送の長所は“統一したカラーがない”
――客観的に見て、文化放送の長所はどういうところだと太田さんは思います?
文化放送の長所は、いい意味で“何でもあり”というか、“バラバラ感”といいますか。“統一したカラーがない”のが弱点でもあり、長所でもあるような気がしています。番組の個性を活かしながら、全体としてどういうイメージで発信していけばいいのか、現場の人たちと一緒に考えていきたいですね。
――実際に「こういう番組を作りたい」という具体的なアイディアも頭にはありますか?
若い頃は、アナウンサーという立場にいながら「こんな番組ができたらいいんじゃないか?」という突拍子もないアイディアが思い浮かんでいたんですけど、さすがにこういうポジションに就くと現実的に落とし込まなければいけないんで、なかなか出てこなくなりつつはあるんです。
むしろ、若い人たちの突拍子もないアイディアや「こういうことをやりたい」という気持ちをどう具現化するか、落とし込むかということを考えていく立場なんだろうなと、徐々に考え方を変えているところではありますね。
――まさに今、春改編の話がたくさん出ていますが、編成としては1番プレッシャーを感じる時期なんじゃないでしょうか。
そうですね。今までは番組に出る立場でしたから、おかげさまでいろんな仕事をさせていただいてきて、パーソナリティに知り合いや親しくさせていただいている方が沢山いるんですけど、そういう人たち相手に「改編するので、番組を終了しますよ」という決定するのが私のポジションなんです。
周りから「守ってくれよ」と言われるようなことがこれからいくつか出てくるのではないかなと。それは苦しい立場なんですけど、そういう役割なんだなというプレッシャーは感じています。
――難しい立場ですけど、逆に言えば、新しい出会いをどんどん生み出せるとも言えますよね。編成としては、どれぐらいのスパンで物事を考えているんでしょう? 1年後のことを見据えているのか、それともその場その場で対応していくものなのか。
5年先、10年先の文化放送のイメージがあって、同時に2年先、3年先のイメージもあって。そのためには1年後はどういうラインナップにして、今からどういう動きをしようかと考えるのが理想的なものだと思います。ただ、いざこういう現場に放り込まれてみると、どうしてもバタバタして、後手後手になりがちなので、そこをなんとか早め早めに中長期見据えてやっていきたいなと思っていますね。
■太田英明
1963年5月19日生まれ。1986年、アナウンサーとして文化放送に入社。入社後は、『東京っ子NIGHTお遊びジョーズ!!』『吉田照美のやる気MANMAN!』『From C Side』『大竹まこと ゴールデンラジオ!』など数多くの番組を担当。2020年9月、『大竹まこと ゴールデンラジオ!』の放送内で内示を受け、10月1日付けで編成局長に就任した。