――様々な経験をしたうえで、この10月から金子さんが『ANN』のチーフディレクターに就任されました。石井(玄)さんのあとを受けてのチーフですが、今のお気持ちはいかがですか?
消極的なことを言うと、AMの深夜ラジオをそんなに通ってきてない人間がこんな重大な責務についていいのかと(笑)。ラジオを好きな方に「ナインティナインさんのANNはどうですか?」と聞かれてもなにも答えられないし、「昔、こういうコーナーがあったんですよ」と言われても、「すいません。ちょっと勉強不足で」という感じなので。そこはコンプレックスでもあるんです。知っていないよりも知っているほうが絶対いいので。
ただ、コンプレックスではありつつも、ここ数年の『ANN』の雰囲気はわかっているので、新しいことができたらいいなと思いつつ。まあ、新しいことを求められているのかもわからないんですけど。
――最近の『ANN』は盤石の体制になっている印象を受けます。
ウイカさんの番組を始めたときに特に思ったのは、佐久間(宣行)さんもそうですが、芸人さんだけでなく、アーティストも、アイドルも、タレントも文化人も、いろんなタイプの人がしゃべっているのが『ANN』っぽいなあと。芸人さんのラジオが話題にあがることが多いですけど、Creepy Nutsという“スーパー逸材”が入ったのはいいことだなって。あんなに面白いアーティストはなかなかいないですから。
あと、僕は関わってないんですけど、霜降り明星の「ポケひみ回」は“超カッコよかった”じゃないですか。僕自身、あんなにカッコいいことがラジオでできるんだって改めて感じたので、カッコいい人たちとそういうことができればなと。ひいては、『ANN』を聴いていること自体がカッコいいと思われるようになったらいいですね。
――まだチーフとして具体的にやりたいことは考えていない感じでしょうか?
いい意味で現状維持というか。素晴らしい方たちがしゃべってくれているので、もっともっと多くの人に聴いてもらえる状況が作れたらいいなと思いますね。あとはパーソナリティの方たちに楽しんでもらえないと番組を続けてもらえないので。ラジオを大切にしてくれる人たちばかりがしゃべってくれているからこそ、それを壊さないようにしたいです。
■『ミュージックソン』チーフDに就任
――『ANN』のチーフにもなりましたが、今年はクリスマス恒例の24時間特番『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン2020』のチーフディレクターもご担当されるそうですね。
これもメチャクチャ荷が重いです(苦笑)。以前、石井さんがANNのディレクターとして『ミュージックソン』をやりましたけど、そのときのパーソナリティだったオードリーを普段から担当されていたんですよね。僕の場合、パーソナリティのKis-My-Ft2とSixTONESの番組の両方に関わっていないので。メンバーの方たちからすると、いきなり変なディレクターが現れて、「ミュージックソンをやります」という感じだと思うんですよ。
――とはいえ、「ミュージック」とつくわけですから、音楽好きの金子さんにピッタリの大役じゃないですか。去年も関わっていたんですよね?
セカンドみたいな形で関わってはいて。去年、全部ではないんですが、結構多くの曲を僕が選曲したんですけど、意外と評判がよかったんですよ。例年は定番のクリスマスソングばかり流れていたので、それも踏まえつつ、たまに意外な曲を差し込んだら、会ったこともないニッポン放送の偉い方に「選曲がよかった」と褒めていたので、僕がやりましたって自慢げに言いました(笑)。
『ミュージックソン』では多少なりともFMでやってきたことを活かしたいですね。リスナーの皆さんも感じることがあると思うんですけど、CM中のフィラー(無音になるのを避けるために事前に組み込まれている音楽)って、ちょっとエモくなるじゃないですか? そういうことにはずっとこだわってやっていきたいです。
――ニッポン放送で聴いている場合、一瞬しか流れないですけど、あのフィラーの選曲をディレクターがやっているのを知らない方は多いかもしれませんね。他にも音楽の部分でこだわっているところはありますか?
それっぽいことを言うと、ただ普通に曲をかけたら、すでにあるものなんで、「100」でしかないですけど、「この話をしてからかける」みたいにタイミングを考えると、それが多少ですけど「102」になったり、「105」になったりする可能性があるので、それはディレクターができることかなと思ってます。もしかしたら、それはFMを聴いていたからやれているのかなという気はしますね。
――では、今年の『ミュージックソン』でも金子さんが選曲を?
……やりますか(笑)。大方はやりたいと思います。1時間3~4曲と考えると、50~60曲ぐらい選ぶんですよね。自分が音楽の知識があるというのを出す場ではないんですが、ベタな曲もありつつ、たまに「こんな曲がありますよ」という提案ができたら。それに引っ掛かる人がいたら、そんなにうれしいことはないです。
■金子司
大学卒業後、2011年にエフエム群馬入社。2016年にサウンドマン(現在のミックスゾーン)に転職。現在はニッポン放送『三四郎のANN』(毎週金曜 25:00~)、『ファーストサマーウイカのANN0』(毎週月曜 27:00~)、『Creepy NutsのANN0』(毎週火曜 27:00~)などを担当。また、この秋から『オールナイトニッポン』のチーフディレクターに就任。