――太田さんから見て、今後のラジオ界はどうなっていくと思いますか? 厳しい状況ではありますが、同時に新たに注目を集めている面もあります。
自分で発信できる音声アプリも増えていますし、放送とは関係ないポッドキャストのような形も増えているので、ラジオと競争関係になってくるとは思うんです。それに打ち勝って、皆さんがラジオを聴いてくれる状況を貫くためには、面白いものを作っていくことしかないと感じています。そこは現場の人と一緒になって、面白い番組を作り続け、ひいては「ラジオって面白い」とわかってもらえたらいいと思います。「どんなメディアであれ、音声で表現することは面白いんだ」ということを突きつめていきたいですね。
■文化放送を今後どうしていきたいか
――今後、文化放送をどうしていきたいか、太田さんのビジョンを聞かせてください。
現場の方々の意見も聞かなきゃいけないと思うんですけど、私が今まで文化放送でやってきたものは、結構突拍子もなかったり、アナーキーだったり、「えっ、こんなことやっちゃっていいの?」という番組が多かったので、どうしても思考や発想はそっちに寄ってしまうんです。いろいろ難しいご時世ではありますけど、世の中を驚かせるようなことをしたいですね。
「こんなことやっちゃうの?」「こんな発想ありなの?」「これはやっていいんだ!」という番組を作りたいと考えている一方で、ラジオは聴いている方に対して寄り添うメディアだと思うんです。先ほどお話ししたように、「ご夫婦で職を失った」というようなメールで送ってくださって、それを番組で紹介することって、なかなか他のメディアではないものなので。居場所がなかったり、心が折れそうだったり、どうしていいかわからなかったり……。そういう方たちに、癒しや優しさ、勇気を与えられるようなメディアでもありたい。その2つは大事にしたいと考えています。
――いち個人としてやりたいことはありますか?
本当に妄想ですけど……ハーレムみたいな番組をやってみたいですねぇ。
――編成としてはではなく、あくまでも一個人としての考えだと、そんなアイディアが思い浮かぶと(笑)。
そんな番組をやりたいなあとアナウンサー時代は思っていました(苦笑)。あとは、絶対にありえないんですけど、文化放送全体を海の家に仕立てて、みんな水着でいる、みたいな。そういうような妄想から何か面白いことが生まれないかなと常に考えてはいました。今は「そういうことはするな」という立場になったので(笑)。
――でも、そんな妄想をしていた太田さんがトップにいれば、若いスタッフさんたちもアイディアを提案しやすいかもしれませんね。
そういう風になってくれるといいんですけどね。世の中全体が萎縮しているというか、自主規制がキツい時代になっていると思うので、ラジオがそこをもう1回自由にしていくような企画をやってみたいです。
――最後に、編成局長のお話が『ゴールデンラジオ』で出た際に、「いずれ社長も」という意見もありましたが、それについてはいかがですか?
いや、まったく器ではないですね。そんなことになったら、うちの会社が潰れちゃいますよ(笑)。
■太田英明
1963年5月19日生まれ。1986年、アナウンサーとして文化放送に入社。入社後は、『東京っ子NIGHTお遊びジョーズ!!』『吉田照美のやる気MANMAN!』『From C Side』『大竹まこと ゴールデンラジオ!』など数多くの番組を担当。2020年9月、『大竹まこと ゴールデンラジオ!』の放送内で内示を受け、10月1日付けで編成局長に就任した。