ラジオ業界に関わる様々な人を掘り下げる連載「ラジオの現場から」。記念すべき1人目は放送作家の鈴木おさむ氏だ。これまでテレビの世界で『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』など数々のバラエティ番組を手掛け、映画やドラマの脚本家としても活躍しているが、同時に“ラジオの人”でもある。

TOKYO FMでは16年にもわたってパーソナリティを務めており、現在は金曜日の昼に放送されている『JUMP UP MELODIES TOP20 supported by Ginza Sony Park』(毎週金曜 12:00~14:55)をTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEの陣とともに担当している。

鈴木おさむ氏へのインタビューは4回にわけて掲載していくが、第1回の今回は、放送作家としてパーソナリティをし続ける理由を聞いた。

■「コロナ禍の中でチャート番組ができたのはラッキーだった」

  • 鈴木おさむ氏

――『JUMP UP MELODIES TOP 20 supported by Ginza Sony Park』は今年4月にスタートしました。コロナ禍の最中に始まってから半年経ちましたが、手応えはいかがですか?

自分にとって血となり、肉となっていますね。コロナ禍の中で開始すぐにリモートになり、陣くんは事務所から、僕は家からやっていました。これでラジオができちゃうという環境と技術がすごいなと思いましたね。究極的に言うと、東京に来なくてもできる。そういうことができる時代なんだなと感じました。最初はヒゲダン(Official髭男dism)だったり、King Gnuだったり、あいみょんだったりがチャートを独占してたんですけど、数週間たったら、YOASOBIとか、瑛人が出てきて。

――番組で取り上げるのは、単純な売上ランキングではなく、Spotifyの急上昇チャートを1週間単位で集計したものですから、世の中の動きがすぐに表れます。

コロナ禍のタイミングで、音楽がガラッと変わって、特に若い子にとっての音楽がいろんな振れ方をしました。もちろん以前はテレビの影響もすごい大きかったですけど、今はTikTokとYouTube、その2つからの流行りが多くて、あの2、3カ月で音楽の環境が大きく変わったと思うんです。そんな時期に毎週トップ20を紹介する番組をやれたので、アーティストの名前や曲を覚えるんですよ。このタイミングでやれたのはめちゃくちゃラッキーだったなと思います。

――急激な変化を毎週チャートで確認することができたと。

この番組をやってなかったら知らなかったことでしょうから。僕はBSフジで『冗談騎士』という番組の司会を(2016年~2018年にやっていた前身番組の『冗談手帖』から含めて)4年前からやらせてもらっているんですけど、ちょうど去年からお笑い第七世代のブームが来ていますが、『冗談騎士』にはのちに第七世代のブームで中心になる芸人さんたちがずっと出ていたんです。

その番組をやっていたおかげで、第七世代のメンバーはみんなしゃべったことがあったり、見たことがある人たちだったので、置いてけぼりにならなかったというのがあったんですけど、『JUMP UP MELODIES TOP 20』のおかげで、音楽でも今を知れて、なんとなく追いついていけるというか。しかも、別に無理して勉強しているわけでもなく、音楽が変わっていく、状況が変わっていくときにこの番組ができているのはめちゃくちゃ自分の身になってますよね。

■「僕自身に聞きたいことがたくさんある感じ」

――番組からは鈴木さんが今の音楽に対して前のめりになっているのを感じます。「若い世代のことだから、俺はついていけないよ」という雰囲気もなくて。

正直言うと、前はミュージシャンが自分の番組にゲストとして来るのがあんまり好きじゃなかったんですよ。ラジオに出るのは彼らにとって仕事だし、曲を届けるためにいろいろな番組に出ているんだろうから、きっとしんどいんだろうなって。「この曲にこめられた気持ちは?」って毎回聞かれるのもきついでしょうしね。

でも、『JUMP UP MELODIES TOP 20』には若いアーティストさんが出てくれるんで、向こうも新鮮だろうし、こっちも新鮮なんです。瑛人さんが出てくれたときに歌詞に出てくる「香水」のエピソードを聞いたんです。出演した時点では他ではほとんど語っていないことでしたが、その数週間後に『ミュージックステーション』に出て、同じエピソードを話していて、結構バズっていましたね。最近のアーティストの話は新鮮だし、面白いですね。僕自身に聞きたいことがたくさんある感じです。

――放送作家さんがチャート番組のパーソナリティをする、というのは珍しいんじゃないかと思います。

どうでしょうね? 放送作家だからこそ興味があることってあると思うんですよ。だから、パーソナリティとしてというより、自分が知りたくて紹介しているというのが大きいかもしれないですね。