2025年開始の囲い込み規制、効果は限定的?

2025年1月、ようやく囲い込み問題に本格的なメスが入る。不動産業界の囲い込み行為が処分対象となる法改正が実施され、処分対象となる行為の具体的な内容や範囲が定義されるとともに、違反した事業者には罰金や業務停止などの措置が講じられる見込みだ。

ところが、らくだ不動産の山本氏は「罰則規定ができたことは、囲い込みに対するリテラシー向上の第一歩になる」としつつも、囲いこみ規制の実効性に疑問を呈する。

「不動産業界で働く人は、囲い込みがよくないことはわかっています。わかった上で巧妙な囲い込みが行われている実態があるので、規制によって囲い込みがさらに巧妙化する可能性があります。また、囲い込みがなくならない要因のひとつに、本人に囲い込み行為をしているという認識がないことが挙げられます。先輩から教わった通りにやっているだけで、自分が囲い込みをしていることに気づいていない人が増えている印象です。内部通報の仕組みに加えて、そもそも囲い込みはどういった行為を指すのか、しっかりと定義した上でエージェントを教育するという根底の部分から立ち向かっていかないと是正は難しいのではないでしょうか」

らくだ不動産 長嶋氏も「もっと罰則を厳しくしないと、会社としては禁止していても現場レベルでやっているという域から脱することはない」と指摘。日本大学 中川教授は「国がいかに禁止行為を発見できるのか、不動産業界が囲い込みはダメだという意識を持てるかが実効性を左右する」と語る。

抜本的な囲い込みの抑止策とは?-アメリカの例

囲い込みの抑止策として参考になるのがアメリカの事例だ。アメリカでは地域の業界団体が共同で設立した「MLS(Multiple Listing Service)」という仕組みがある。他社の監視の目があることに加えて、不度重なる囲い込み行為を行った不動産会社はMLSから締め出されるという致命的なペナルティがあることで、囲い込みが効果的に抑制されているという。

らくだ不動産 長嶋氏は、囲い込み問題の根本的な解決策として「仲介手数料の上限撤廃」を挙げる。売買価格の3%+6万円という仲介手数料の上限は1970年代から変わっておらず、時代の変化に対応できていないというのがその理由だ。囲い込みがなくならない背景には、地方や郊外の物件価格が安い不動産の場合、手間のわりに不動産会社に入る仲介手数料が少なすぎるという切実な事情もある。ビジネスとして割に合わないため「せめて売主と買主の両方から仲介手数料を得よう」と、囲い込みのインセンティブになってしまうというのだ。

こうした現状を踏まえて長嶋氏は「仲介手数料の全額を売主が払うことで、中古住宅市場に買主が入ってきやすい仕組みになっているアメリカの例も参考にしつつ、どうすれば中古住宅事情が活性化するのか、マクロとミクロの両面から考えて制度設計を根本から見直すときにきている」と強調する。

2025年の不動産市況は「三極化がさらに進む」

2025年から始まる囲い込み規制は、不動産業界の囲い込み問題に一石を投じるきっかけにはなるものの、囲い込みを撲滅できるほど抜本的な効果は期待できないようだ。都心部を中心に不動産市況の過熱感が強まっているが、2025年の市況はどうなるのだろうか。

らくだ不動産 長嶋氏は「2025年の不動産市況はさらに三極化が進む」と予想する。不動産市場の三極化とは、「価格維持または上昇する物件」「なだらかに価格が下落する物件」「無価値あるいは固定資産によってマイナスになる物件」を指す。コロナ禍で火がついた一戸建て市場は縮小傾向、立地に難のある中古マンション市場も低調だが、都心五区だけでなく、地方でも一部のエリアでは高額マンションが売れている地域がある。

長嶋氏は「市場の平均的なデータだけを見ていると現実を読み誤ります。日本はニーズのわりに数十億円規模の高額物件の供給が少ないので、今後そういった物件の増加が平均価格を引き上げます。今後さらに金利が上がったとしても、弱い地域がさらに弱くなるだけで、強い地域は影響を受けないどころか高額物件の影響で平均価格はむしろ上がるでしょう。東京でも三極化、地方でも三極化が進み、日本全体で三極化が進んでいくと考えられます」と語った。

2025年に囲い込み規制がスタートするものの、残念ながらそれによって囲い込みが完全に撲滅されるとは考えにくい。らくだ不動産はこうした不動産業界の現状を受けて、取引のプロセスを可視化して囲い込みをなくす不動産売却プラットフォーム「みんならくだ。」をリリースした。囲い込み問題をなくすためには、国の規制だけではなく、消費者一人ひとりが囲い込み行為をする不動産会社とは付き合わない意識を持つことも大事ではないだろうか。