2025年1月、長年続く不動産業界の悪しき慣行として問題視されてきた「囲い込み」を規制する法改正が行われる。このいわゆる「囲い込み規制」によって、不動産業界は変わるのか。12月4日に「らくだ不動産」が開催したウェビナーの内容から、囲い込みの現状や囲い込み規制が不動産業界に与える影響、2025年の不動産市況の見通しなどを紹介する。

不動産業界の悪しき慣行「囲い込み」とは

国内の不動産会社は「レインズ(REINS)」と呼ばれる不動産情報ネットワーク上で、自社が保有する物件情報を共有している。理論上は、物件を売買したい人は、どの不動産会社に依頼しても、すべての物件情報にアクセスできるはずだが、現実には特定の不動産会社経由でないと購入できない物件が多々存在する。その元凶が、長年不動産業界の悪しき慣行として問題視されてきた「囲い込み」だ。

「囲い込み」とは、売主から売却の依頼を受けた不動産会社が、故意に他の不動産会社の買主紹介を断ることを指す。売主を担当する不動産会社が他社からの買主紹介を断る理由は、自社で買主を見つけて、売主と買主の双方から仲介手数料を得るためである。

不動産仲介業は不動産を売買する人から、売買価格の3%+6万円を上限とする仲介手数料を得ているため、売主と買主の両方を自社で担当すれば、不動産会社に入ってくる仲介手数料が2倍になる。この仲介手数料の仕組みが「囲い込み」のモチベーションになってしまっているのだ。不動産業界では、こうした囲い込みは数十年前から問題視されてきたが、その実態は一般にはあまり知られていないという。

らくだ不動産 顧問の長嶋修氏はこう語る。「いまだに物件情報をレインズに載せない、掲載しても商談中と嘘をついて断る、あえて汚い間取り図を載せるといった行為が横行しています。先進国でこのような行為が当たり前に行われているのは日本だけではないでしょうか。囲い込みは不動産仲介市場が滞る原因になっており、新築に比べて中古住宅の流通が増えない主要因のひとつにもなっています」

  • ウェビナー登壇者

物件価格高騰で巧妙化する囲い込みの実態

近年、都心部のマンションを中心に物件価格の高騰が続いているが、売却の獲得競争が熾烈化する中、囲い込みの実態もより熾烈かつ巧妙になってきているという。らくだ不動産 副社長の山本直彌氏は次のように語る。

「囲い込みは今も当たり前のように行われています。従来は、他社から紹介依頼があった際に、買主を担当する不動産会社が『商談中』と嘘をついて断るのが囲い込みの常とう手段でした。ところが最近は、内見のセッティングをあえて2カ月先に設定して成約できないようにしたり、内見と購入のオファーまではさせるものの、売主を担当する不動産会社が『当社が紹介した買主さん以外は信用されにくいのでお取引につながらないかもしれません』なとど言って自社経由での購入に誘導したりしています。囲い込みは、内見の手前だけでなく、内見後も起きているのです」

囲い込みは売主・買主双方の不利益に

このような不動産業界の囲い込みが問題視されるのは、売主と買主、双方に不利益をもたらし、ひいては社会全体の不利益になるからだ。

売主を担当する不動産会社は、売主と買主の双方から仲介手数料を得るために囲い込み行為を行うわけだが、商談を成立させるために価格交渉を受けるケースもある。1億円の物件があったとして、他社経由で満額1億円の購入オファーが入っていても、不動産会社がそれを断り、9,500万円にディスカウントしてでも自ら買主を見つけようとするのである。こうなると、売主はより高い価格で購入してくれるオファーを取り逃がすことになる。また、ディスカウントには至らなかったとしても、一社の不動産会社が取引を独占しようとすることで、売却に必要以上の時間を要するケースも多い。

一方、買主にとっては、本来得られるはずの物件情報が得られない、あるいはせっかく自分のニーズに合った物件が見つかったのに囲い込みのせいで希望の物件を購入できないといった不利益が生じる。