日常生活が制限なく行われる基準である「健康寿命」は、2016年厚生労働省発表によると、男性72.14歳、女性は74.75歳となっています。つまり、75歳に差し掛かると何かしら生活に制限が発生している可能性が高いということです。そのため、「生活費」「介護費」「医療費」が老後の必要資金の大きな要素となり、ここに趣味や娯楽などが加わります。

これからそれぞれの考え方を示していきますが、皆様が考えながら実際に計算していただくことを期待して、あえて必要合計額は計算していません。数値だけが独り歩きしがちな傾向にありますが、一人ひとりのライフスタイルに照らし合わせながら計算していくことが大切なのです。

老後の生活費の計算方法

老後の生活費を算定する方法はいくつかあります。最もよいのは、今の生活から割り出すことです。

子どもたちも独立し、ローンを払い終わったマイホームがある前提で考えてみましょう。外食も少なくなるでしょうし、光熱費も節約すると想定して算定します。リタイアすれば衣服費はあまりかかりません。交際費も少なくなるでしょう。

基本的な生活費を算定したら、老後も続けたい趣味やレジャーの費用、高くなると思われる医療費を算定します。「夫婦で30万必要」などという、バブリーな文言に左右されるのではなく、まずは基本的な数値をはじき出してください。

もう一つは統計値から算定する方法です。総務省統計局が毎年家計調査を行っており、直近3カ月のデータもあります。無職の世帯や単身者世帯のデータも検索できますので、実際の収支を知ることができます。ただし統計は詳細な項目となっていますので、慣れないとわかりにくい側面があります。

わかりやすくまとめたデータとしては、日銀の情報サービスである金融広報中央委員会が運営する「知るぽると」の中の「暮らしと金融なんでもデータ」があります。詳細な統計値を基にわかりやすくまとめられていますし、老後の生活だけでなく教育費などのデータもありますので大いに参考になります。

さらに生活保護の給付額を参考にする方法もあります。単身者で約7.5万円+アパート代、2人世帯で約11万円+アパート代です。これで最低限生活できるはずと考えれば、アパート代の代わりにマンションの管理費などを加えて、健康保険代や医療費、税金などと希望するゆとり額などを加えて計算してください。

『知るぽると』によると、2014年の65歳以上の無職世帯の毎月の支出は、夫婦世帯は約24.0万円、単身男性世帯は約14.9万円、女性単身世帯は約15.3万円となっています。

元の出典は厚生労働省「平成27年国民生活基礎調査」です。同データによる2015年の65歳以上の貯蓄金額は全国平均で2,504万円となっています。また、老後の収入源として2015年のデータは仕事による収入が23.4%、年金が70.8%、その他の項目はそれぞれ1%程度です。